コロナ搬送巡り国を初提訴 患者遺族「体制に不備」
2021年に新型コロナウイルスに感染した千葉県船橋市の男性=当時(23)=が死亡したのは救急搬送体制の不備が原因だとして、男性の両親が5日、国と県、市の3者に計約1億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。両親側代理人によると、コロナ患者の救急搬送を巡り国の法的責任を問う訴訟は初めて。
訴状によると、男性は緊急事態宣言中の21年8月23日に感染。糖尿病などの重症化リスクがあり、28日に医師が「肺炎や合併症があり入院が必要」と診断した。市保健所の指示で一度はホテルに入ったが、男性から十分な治療を受けられないと告げられた両親が翌29日に自宅へ連れ戻した。
両親や男性が29日以降、症状悪化を訴えて救急搬送を繰り返し求めたのに対し、市保健所は「県と調整中」などと回答。30日の5回目の要請で搬送された後に容体が急変し、病院で死亡した。
両親側は、患者の救急搬送は国の自治体への法定受託事務であり「実質的に国の業務だ」と指摘。国は全国的な搬送体制を調整し指示する権限があるのに、適切に行使しなかったと主張している。保健所を設置する市と搬送先を調整する県にも過失があるとしている。
提訴後、両親が東京都内で記者会見し、父親(58)は「救える命を救うことができる国になってほしい」と語った。千葉県と船橋市は、いずれも「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」とした。