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テーマ : 新型コロナ・全国

国際郵便を悪用、密輸相次ぐ 5年間で薬物摘発3千件

 違法薬物などの密輸入で「国際郵便」を悪用するケースが相次いでいる。薬物密輸の摘発件数のうち、過去5年間で国際郵便が使われたのは6割超の約3千件。水際対策の税関検査について「抜け穴があり、摘発は氷山の一角」とする声も出ており、識者は最新の人工知能(AI)を活用した検査機器を導入するなどの対策が必要と話す。

税関検査に当たる検査官=9月、川崎市の横浜税関川崎外郵出張所
税関検査に当たる検査官=9月、川崎市の横浜税関川崎外郵出張所

 9月下旬。日本への国際郵便の約8割を扱う横浜税関川崎外郵出張所(川崎市)で、検査官が次々と段ボール箱をエックス線検査にかけていた。不審と思われる荷物は開封して目視で確認。昨年、同出張所で摘発された国際郵便による薬物密輸は約400件に上る。
 国際郵便は海外との間で手紙や荷物を配送でき、最新の統計では国内からが約2千万通、海外からが約1億4千万通。内容物の課税価格が20万円超の場合は税関に申告した上で許可が必要だが、ほとんどを占める20万円以内のものは不要とされる。
 財務省によると、薬物密輸事件の摘発数は2018~22年の5年間で計4543件。うち国際郵便は3057件で、航空機旅客820件、航空貨物577件、海上貨物62件などと続く。国際郵便の手口は増加傾向で、同省は新型コロナウイルス禍で減った航空機旅客の代わりに増えたとみる。
 全てを摘発できているわけではない。税関検査で国際郵便の中身を調べるかどうかは検査官の感覚や経験頼りの面もあり、税関関係者は「人員も十分とは言えず、精密に検査できる数には限界がある」と打ち明ける。
 長年検査をすり抜けていた例も。害虫流入防止のため輸入禁止の中国産ナシを国際郵便で密輸したとして、大阪府警が8月に植物防疫法違反容疑で書類送検した中国籍の食品店経営者は、4年前から密輸を繰り返していたとされる。捜査関係者は「水際対策だけでは止められない」と漏らす。
 国際物流に詳しい敬愛大(千葉市)の根本敏則教授(交通経済学)は「より効率的に取り締まるため、AIを活用した荷物検査スキャナーなどの開発を進めるとともに、国内外の関係者が協力し、密輸を防ぐ仕組みを構築、改善していく取り組みが重要だ」と話した。

 国際郵便 国連の専門機関である「万国郵便連合(UPU)」が定めたUPU条約に基づき、加盟国間で手紙や荷物を配送できるサービス。国内では日本郵便が事業を担っており、最新の統計では国内からが約2千万通(2022年度)、海外からは約1億4千万通(19年度)だった。種類は手紙やはがきなどの「通常郵便」、30キロ以内の荷物を扱う「小包郵便」、最も短期間で配送できる「国際スピード郵便(EMS)」などがある。

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