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テーマ : 磐田市

涼誘う夏の金魚、競り熱く 浜松生まれ「浜錦」の魅力は

 夏の風物詩といえば、金魚。金魚すくいは夜店の定番で、赤い小さな和金、愛らしいデメキンなど水槽の中を泳ぎ回る姿が涼を感じさせる。全国から専門業者が集まる競り、浜松生まれの「浜錦」、常設の金魚水族館などで魅力を探った。

ランチュウ、デメキンなど、さまざまな金魚を上から見て、品定めをする競売会参加者たち=浜松市東区の清水金魚(浜松総局・二神亨)
ランチュウ、デメキンなど、さまざまな金魚を上から見て、品定めをする競売会参加者たち=浜松市東区の清水金魚(浜松総局・二神亨)
「天竜川の豊かな水が金魚の飼育に合う」と語る清水誠一郎社長(浜松総局・二神亨)
「天竜川の豊かな水が金魚の飼育に合う」と語る清水誠一郎社長(浜松総局・二神亨)
「地元生まれの『浜錦』。大切に育て守りたい」と話す稲垣良弘さん=磐田市(浜松総局・二神亨)
「地元生まれの『浜錦』。大切に育て守りたい」と話す稲垣良弘さん=磐田市(浜松総局・二神亨)
ランチュウ、デメキンなど、さまざまな金魚を上から見て、品定めをする競売会参加者たち=浜松市東区の清水金魚(浜松総局・二神亨)
「天竜川の豊かな水が金魚の飼育に合う」と語る清水誠一郎社長(浜松総局・二神亨)
「地元生まれの『浜錦』。大切に育て守りたい」と話す稲垣良弘さん=磐田市(浜松総局・二神亨)

 

40種ずらり 全国から業者「清水金魚」


 観賞魚の卸を専門とする「清水金魚」(浜松市東区)は、おおむね毎週木曜日に競売会を開く。県内では唯一、国内でも約10カ所しかない金魚の競りの一つで、東海や関東地方を中心に卸売り、小売業者が集まってくる。
 6月中旬の競売会は、背びれのないランチュウ、こぶのある頭が特徴のオランダ獅子頭[ししがしら]、長い尾が優雅な琉金など、40種がたらいに入れられた。威勢の良い競り人の掛け声が響く中、参加者は金魚の体形、色や模様の入り具合、泳ぎ方などを見極めていく。3代目の清水誠一郎社長(70)は「金魚は上から眺めて善しあしを判断する。『頑張って泳いでいます』という金魚より、さりげなく泳ぐ金魚の方が、趣があって人気が高い」と目利きのポイントを明かす。
 同社は1928年、初代の清水弥一さんが、趣味が高じて金魚の生産卸業を始めた。2代目の徹二さんが新種「浜錦」を育て広め、国内でも老舗問屋として知られる。
 金魚をはじめ、メダカや熱帯魚、錦鯉などを取り扱い、25メートルプールが入るほどの敷地に水槽が並ぶ。天竜川水系の井戸水を引き入れ、水質の良さにも恵まれているという。
 長引く新型コロナウイルス禍で、夏祭りなど金魚すくいの需要はまだ回復していないが、誠一郎さんは「金魚は色柄、形も豊富にあり、人懐こい。自宅で過ごす時間が増える中、金魚の飼育を楽しんでもらえたら」と期待する。
 

お気に入りは? 特徴いろいろ

 
 
 ■ランチュウ
 背びれのない卵形の体、肉りゅうが発達した頭が特徴で迫力と愛らしさを持ち合わせる。愛好家が多く品評会も盛ん。清水金魚でもランチュウがメインの競りが開かれている。
 
 
 ■キャリコ和金
 室町時代に中国から渡来した「和金」の一種。すらっとした体つきで素早く泳ぎ回り、赤、白、黒の3色のキャリコ柄が水槽に映える。
 
 
 ■オランダ獅子頭
 大きな肉りゅうを持つ愛嬌[あいきょう]のある顔、長く優雅なひれの組み合わせが特徴。江戸時代に中国から輸入され、舶来品を指す「オランダもの」と、獅子の頭のように発達する肉りゅうが名前の由来。赤と白の更紗模様が人気。
 
 
 ■デメキン
 両目が横に突き出したかわいい表情が魅力。琉金の突然変異したものから作られた。全身真っ黒な黒デメキンが最も人気があり、金魚すくいでもポピュラーな存在。
 

浜松生まれ 愛くるしいこぶ 浜錦


 清水金魚で生まれた「浜錦」は、頭部がハート形にぷっくりと膨らんだ肉りゅうが最大の魅力。清水誠一郎さんは「頭のこぶがごつごつしておらず、ランチュウやオランダ型とは違った風情。体形も丸く愛らしい」と語る。
 昭和40年代、同社が香港からオランダ型を輸入し、愛知県内の養魚家と繁殖を始めた。肉りゅうが水泡状に発達したものを選別し、1977年に新種「浜錦」として日本観賞魚振興会(現在の日本観賞魚振興事業協同組合)に認定された。当時、代理で総会に出席した清水さんは「新種として認められた金魚は数少ない。地元生まれの金魚を大切に守っていきたい」と話す。
 ただ繁殖が難しく、生産者は全国でも数人という。そのうちの1人、稲垣良弘さん(75)=磐田市=は会社員だった30代、同僚に勧められてランチュウを飼い始めた。自宅敷地内に手作りの水槽を並べ、さまざまな金魚やメダカを育成している。
 「浜錦」は20年前から手掛け、現在は素赤、更紗模様の計75匹を育てる。「病気に弱いため手が掛かるが、どんな尾の形か、どんな模様が出てくるか楽しみがある」と、日々の世話に余念がない。
 
 

珍種勢ぞろい 専門水族館 御殿場「水中楽園 アクアリウム」


 珍しい種類を見たいなら、金魚専門の水族館「水中楽園 Aquarium(アクアリウム)」(御殿場市)=写真=がお薦め。御殿場高原時之栖が2015年、ホテルや商業施設を運営する一角にオープンさせ、約20種4500匹を常設展示している。
 品種ごとに円筒状の水槽、光の演出を施した水槽に入り、その数は100を超える。中央に置かれた輪島塗の巨大な杯には、流線形のコメットが優雅に泳ぐ。両目が上を向いた「頂天眼」、淡い赤白色の「桜錦」、華麗な尾を広げた「土佐錦」など、珍しい品種がそろう。
 後藤龍蔵館長(46)は「金魚をめでる文化は江戸時代に花開いた。その雰囲気を出したいと装飾も和風を意識している。人の手によってさまざまな美しい金魚が生まれたことを実感できる」と語る。水族館の入り口には、金魚すくいコーナーが設けられ、1回400円で金魚すくいを楽しめる。
 
 

 

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