【識者評論】静岡県内の新しい分断招く/白鳥浩法政大大学院教授(現代政治分析)【川勝知事辞職表明】
エープリルフールにしては1日遅く、また場をわきまえない発言である。2009年の川勝県政の誕生以前から四半世紀以上にわたり、県政を見続けてきた筆者としては、今回の川勝氏の発言はあまりに突然であり、「虚を突かれた」というのが正直なところである。
前回21年の知事選での圧倒的勝利以来、その3カ月後に行われた参院静岡選挙区補欠選挙の最中の御殿場市を揶揄(やゆ)する「コシヒカリ」発言に始まり、浜松市より磐田市は文化が高いと浜松市を揶揄したともとれる発言があったことは記憶に新しい。こうした発言は「県内の分断」を招くものであった。
そして今回は直接的に、この発言である。本来であれば、県庁新入職員の晴れがましい門出の式を、自らの発言で「舌禍の場」としてしまったことは、何よりも新人たちの記憶に刻まれてしまうだろう。
県庁から1次産業従事者を揶揄するともとられかねない発言により、さらに新しい「県内の分断」を招く。川勝知事は行政の長として、まずはこれらの方に強く謝罪をするべきだ。
予期せぬ事態で、任期途中で知事が辞職するのは、静岡空港の「立ち木問題」で辞職した石川嘉延氏に二代続けてである。石川氏は空港問題の「解決のため」に辞職したが、川勝氏はリニア問題も、舌禍事件も「解決ないまま」の辞職表明である。県政の放り出し、無責任だという批判を受けるだろう。
川勝県政は15年続いてきた。しかし、県内の分断や、公共事業の問題など、問題も残されたままのところがある。次の知事は、これらの問題解決に立ち向かう必要がある。
この突然の辞意は、折からの県内国会議員も関係した「国政における政治不信」だけではなく、新たに「県政における政治不信」も助長しかねない。来る投票は「政治不信からの脱却」が、県内において有権者に問われるものとなる。
(白鳥浩・法政大大学院教授)