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テーマ : 磐田市

浜松ホトニクス社長/丸野正氏 光技術で新しい産業を【変革力 新年トップインタビュー⑥】

 ―2024年の経営環境をどう見通すか。

丸野正氏
丸野正氏

 「厳しい状況が続くと思っている。23年9月期は増収増益だったが、当初はもっと成長できると予測していた。中国市場の低迷に加え、インフレの影響で欧米の医療CT用センサーの受注が滞った。メモリー市況の回復も24年後半からと言われる。一方、電気自動車(EV)の普及で、バッテリー検査に使われるマイクロフォーカスエックス線源が製造が追いつかないほど伸びた。ただ、中国のEV市場も陰りがある」
 ―経営の重点戦略は。
 「少量多品種で高付加価値の製品を短期で納めるサイクルを強化する。付加価値向上へ、光検出器と回路を一体化して小型のワンチップにする技術を導入する。当社のような独自の光デバイスに処理回路を結合した製品はあまりない。自動運転車に使われるセンサーのLiDAR(ライダー)やCT用などで要望があり、ある程度の大きさがある市場を目指す。ライダー市場の拡大はEV開発が優先されて遅れているが、50%以上の高いシェアで当社の検出器が使われていると考えているので普及を待つことになる」
 ―デンマーク政府に一度却下され、再申請中のNKTフォトニクスの株式取得とレーザー事業の展望は。
 「NKTは独自のレーザー増幅技術を持つ。申請の結果待ちだが、実現すれば半導体素材をレーザーで切断する技術開発に力を入れたい。申請が通らなかった場合でも技術を使わせてもらう想定をしている。注目される量子コンピューターの実現に必要な技術の多くを当社とNKTが持っている。レーザー関連では昨年に米研究所が、レーザー核融合の実験で投入した燃料以上のエネルギーを取り出すことに成功したと発表したことに勇気づけられた。まだ時間はかかるが、核融合に使える大出力レーザーを提供できるよう取り組む」
 ―23年11月に開いた5年に1度の展示会「フォトンフェア」の手応えは。
 「くらし、宇宙、量子などのテーマごとに技術を展示して、当社の技術の広さに驚いてもらえた。『浜松ホトニクスは何をしている会社か分からない』とよく言われるが、学生の姿も多く、光技術で将来どのような可能性があるか伝えられた。光技術で新しい産業を浜松市につくれるよう地元中小企業と連携していくことも義務だと思っている」
 (聞き手=浜松総局・白本俊樹)

 まるの・ただし 1983年入社。常務、代表取締役専務を経て2022年12月から現職。磐田市出身。63歳。

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