あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 磐田市

磐田・福田西病院が「児童思春期病棟」開設へ 不登校の悩み、入院診療でアプローチ

 磐田市の精神科病院「福田西病院」(141床)が4月に静岡県内最大規模に並ぶ50床の児童思春期精神科専門病床(20歳未満)を備えた「児童思春期病棟」を開設し、不登校で悩む子どもの専門的な入院診療に取り組むことが18日までの同病院への取材で分かった。不登校に特化して、その一因とみられる精神疾患に着目した治療は全国でも珍しいという。森則夫理事長は「増加し続ける不登校に対し、有力な切り口となる」と話し、院内学級の設置を目指し地元行政と調整を進めている。

不登校の治療などに取り組む児童思春期病棟の入る福田西病院で建設中の新病棟=2023年12月中旬、磐田市
不登校の治療などに取り組む児童思春期病棟の入る福田西病院で建設中の新病棟=2023年12月中旬、磐田市
不登校児童生徒数と福田西病院での患者数の推移
不登校児童生徒数と福田西病院での患者数の推移
2024年度から児童思春期病棟で不登校に特化した治療に取り組む福田西病院=2023年12月中旬、磐田市
2024年度から児童思春期病棟で不登校に特化した治療に取り組む福田西病院=2023年12月中旬、磐田市
不登校の治療などに取り組む児童思春期病棟の入る福田西病院で建設中の新病棟=2023年12月中旬、磐田市
不登校児童生徒数と福田西病院での患者数の推移
2024年度から児童思春期病棟で不登校に特化した治療に取り組む福田西病院=2023年12月中旬、磐田市

 同病院は病棟の北側隣接地に現在建設中の2階建て新病棟の1階に児童思春期病棟を設け、入院病床141床のうち50床を転換する。3分の2を不登校の背景にある精神疾患の治療に、残る3分の1を摂食障害などの治療に充てる。現在5人体制の常勤医を2024年度に2人増員して7人体制に整える。将来的に10人体制への拡充を目指す。
 同病院では、精密検査で精神疾患が見られる子どもに対し、不登校が長期化していない場合は外来診療で、長期化したケースは入院で治療を行う。投薬による不安改善や認知行動療法による治療に加え、自宅と離れた環境での生活環境の改善を図る。院内学級を設けることができれば、不安の原因にもなる勉学の遅れを解消でき、基礎学力や生活のリズムを整えられる。
 多数の児童生徒を診療してきた同病院は、文部科学省の調査で不登校の原因の上位に挙げられる「無気力や不安」の背景に精神疾患が影響している場合があると指摘する。不安症やうつ病などの精神疾患による不安や、注意欠陥・多動症や自閉スペクトラム症などの発達障害が不登校行動の促進要因になっていると判断し、治療に取り組む。
 全国的に不登校が増加する中、同病院では不登校の子どもに関する相談が増え、中東遠地域のほか、県東部からの来院もある。森理事長は「不登校は国家的な社会課題。精神医学の問題として児童や両親の苦悩にどう手を差し伸べるかの試みになる。医師や看護師、心理師の確保や育成にも取り組む」と説明する。
患者数増、児童の精神疾患 対応医療機関少なく  不登校の児童生徒数は全国で増加傾向にある。文部科学省によると、2022年度の全国の不登校は29万9048人。県内公立学校では小学校3321人、中学校6126人の計9447人で10年連続で最多を更新した。
 福田西病院では、不登校に関連する相談が寄せられ、児童への診療に力を入れ始めた数年前から紹介などで患者数が増えている。19年度の年間外来通院患者の実人数は小中高生計253人だったのに対し、23年度12月時点で計661人と2~3倍となった。入院患者も19年度は中高生で計17人だったが、23年度12月時点で小学生18人、中高生48人の計66人で急増している。
 現状では、児童の精神疾患の専門的な対応ができる医療機関はまだ少ない。厚生労働省によると、児童思春期精神科専門病床は22年6月30日時点で全国50病院で計1698床。県内では、東海北陸厚生局静岡事務所への届け出ベースで、公立2病院の計86床に限られる。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

磐田市の記事一覧

他の追っかけを読む