あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 磐田市

識者に聞く  就業前の教育環境 拡充を 鵜飼一博准教授(静岡県立農林環境専門職大)【森の守り人 北遠 林業現場から④完】

 国内の森林を守り、自然環境を維持する上で、担い手の確保と育成は最も重要な課題だ。関係者は林業の働きがいを若年層や関心のある人にどう伝え、就職とその後の定着につなげていくか模索してきた。2024年度は「森林環境税」の徴収が始まり、林業や森林行政に対する国民の関心も高まりそうだ。県立農林環境専門職大(磐田市)の鵜飼一博准教授(54)=森林科学=に、担い手確保の現状や課題を聞いた。

林業のけん引役を育てる仕組みの必要性を述べる鵜飼一博准教授=磐田市の県立農林環境専門職大
林業のけん引役を育てる仕組みの必要性を述べる鵜飼一博准教授=磐田市の県立農林環境専門職大

 ―担い手確保の現状は。
 「転職組が増え、30~60代で林業に就職する層が厚くなってきた。東京など首都圏でデスクワークを続けるより仮に給料が半減したとしても林業に勤める方がストレスが少ない-などと考えられているようだ。この部分を林業の魅力として押し出すのも有効かもしれないが、転職したものの相性が合わず、辞めてしまう人も少なくない。続いても3~5年程度と定着率が低い。体力が追い付かないことを理由に辞める場合もある」
 ―人材育成に向けて必要な取り組みは。
 「林業の就業を前提にした教育機関の創設を検討すべきだ。3カ月から半年ほど学んだ後に就職する流れが理想的で、学費は国が負担する。林業へ一歩を踏み出す前に、森林管理の仕組みや林業経営の基礎知識を理解することが必要。基礎を勉強し、将来的に組織を率いるリーダーやマネジャーを目指してもらう」
 ―教育機関を設置する最大の利点は。
 「就職先とのミスマッチを防げる。林業の果たすべき役割などを正しく学ぶことで、仕事との向き合い方が定まる。『チェンソーで木を切りたい』というシンプルなきっかけから林業に入るのもいいが、仕事の幅が広がらず、低賃金のまま推移するリスクもある。事前教育を通じて、林業に関するさまざまな業務に対応できる準備をしておくことが重要」
 ―業界全体に今、求められることは。
 「経営の意識を持つことだ。林業の平均年収は全産業の平均よりも低く、賃上げの努力は欠かせない。ごく一部の限られたケースだが、手取りベースで年収600万~700万円近く稼いでいる企業も存在する。担い手確保と障害者の賃金の向上を目指した『林福連携』や、収益性の高い林産物の開発など期待できる事業はある」

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

磐田市の記事一覧

他の追っかけを読む