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テーマ : 磐田市

【科学する人】分子生態学者/兼子伸吾さん㊦ シカの遺伝的独自性解明

 兼子伸吾さん(磐田市出身)は現在、国内に生息するニホンジカの系統整理に力を注いでいる。「ニホンジカはエゾシカやヤクシカなど六つの亜種に分類されているが、この分類とDNAの遺伝的特徴は必ずしも一致しない」

学生と研究内容を話し合う兼子伸吾准教授(右)=福島市の福島大
学生と研究内容を話し合う兼子伸吾准教授(右)=福島市の福島大

 2023年1月、兼子さんらは奈良公園のシカに関する研究成果を発表した。三重、京都、奈良、和歌山4府県のニホンジカの遺伝子を調べた結果、元は一つだった集団が、奈良公園、紀伊半島東部、同西部の大きく三つのグループに枝分かれしたことが分かった。
 半島の東部と西部では人間による狩猟や開拓を原因とする小集団の消滅や混合が起きる一方、奈良公園のシカだけは千年以上も前から人の保護を受け続け、独自の遺伝子型を保っていた。「特殊な存在。まさに生きた文化財だ」と兼子さん。
 同様に、自衛隊基地の建設工事が進む鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島にすむマゲシカの遺伝的独自性も判明した。「研究を深めればニホンジカ全体の歴史解明につながる。工事で島をつぶすのなら、その可能性が失われることを理解してほしい」と指摘する。
 専門とする生物は特にない。自ら研究対象を決めたことはほぼなく「頼まれた生物を分析するだけだが、相手が驚いたり喜んだりする姿がうれしい」。原発事故の放射線影響の研究も「社会からの要請だ」と言い切る。

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