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初めての富士登山 装備しっかり!安全に【しずおかアウトドアファン】

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 世界遺産登録から10年を迎えた富士山。コロナ禍で外出を控えていた分、「今夏こそは」と日本最高峰への登頂を計画している人も多いようだ。山登りに必要な用具は? 疲れにくい歩き方は?―など、初めて富士登山に挑戦する人に役立つ情報を集めた。

装備
雨具や防寒着 忘れずに

 登山でまず必要とされる装備は登山靴(シューズ)、レインウエア(雨具)、バックパック(ザック)で“三種の神器”とも呼ばれる。静岡市葵区のスポーツ用品店「スポーピアシラトリ静岡ジャンボ店」でアウトドア用品を担当する高橋直己さんは、富士山は溶岩質のため小石や岩場の道が多いとして、「シューズはくるぶしが隠れるミッドカットで、靴底が厚くがっしりした物が歩きやすい」と勧める。雨具は動きやすいよう、上着とズボンが分かれたタイプ、ザックは必要な装備が一通り収納できる容量30リットル前後を選ぶとよいという。
 富士山ならではの備えも必要だ。標高3776メートルの山頂は夏場でも日中の気温が5度程度と真冬並みの寒さ。衣類は吸湿、速乾性に優れたTシャツや下着、伸縮性に富むズボンに加え、シェルジャケットと呼ばれる防風性の高い羽織り物、フリースやダウンジャケット、手袋といった防寒着を用意すれば、状況に応じて脱ぎ着できる。
 日焼け対策の帽子、登山靴とズボンに巻き付けるように装着し小石の侵入を防ぐスパッツ、マスク代わりや砂ぼこり対策になるネックゲイターなども役立つ。
 このほか、水や飲料を入れる水筒、夜間の行動に備えるヘッドランプ、登山中の体力を維持する行動食、伸縮タイプのトレッキングポール(ストック)、救急キット、携帯酸素、休憩時に座布団として使えるマットなどは持参したい。最近はスマートフォンを地図代わりに使う人が多いため「充電用のモバイルバッテリーを購入する人が増えている」(高橋さん)という。


登山道
 

 富士山は人気が高いだけあって静岡、山梨両県にそれぞれ複数の登山道がある。中でも登山者が特に多いのが「4大ルート」。開山期間中は、このうち富士宮、須走、吉田の3ルートで登山口までの道路をマイカー規制する。事前にアクセス手段を確認しておきたい。


富士登山の4大ルート
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富士スバルライン5合目

 山梨県側にあり、登山者が最も多いルート。出発点の富士スバルライン5合目は標高約2300メートル。道中に山小屋が多く、休憩や宿泊がしやすい。日の出の際、麓の山中湖が太陽の光で輝く様子が見られる。


須走口5合目

 須走口5合目(小山町)は標高約2000メートル。4ルートで唯一樹林帯の中を歩き出すため、他ルートとはひと味違った富士登山を体験できる。本8合目からは吉田ルートと合流する。下山路の「砂走り」も人気がある。


御殿場口新5合目

 出発点となる御殿場口新5合目(御殿場市)は、標高約1450メートルと4ルートの中で最も低い。山頂までの距離は最長で、登山者が比較的少なく静かな山歩きを楽しめる。下山路は火山砂利を駆け下る「大砂走り」で有名。


富士宮口5合目

 富士宮口5合目(富士宮市)の標高は約2400メートルと4大登山口の中では最も高い場所にあり、山頂までの距離が短い。駿河湾や伊豆半島の眺望が魅力で、ルート途中からの宝永山へのアクセスもよい。


歩き方のこつは? 富士宮山岳会前会長 工藤誠志さんに聞く
 

 富士登山の際に気をつけたいのが高山病をはじめ、疲労に伴う体調不良や滑落などによる負傷。富士宮山岳会の前会長で、約200回に上る登頂経験を持つ工藤誠志さん(73)=富士市=に歩き方のポイントを聞いた。

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歩幅を狭く、ゆっくりと
 ―有効な高山病対策は。
 

 「富士山は、各登山道の登山口に当たる5合目で標高が2000メートルを超える場所もある。弾丸登山は避け、到着して1時間程度休んでから歩き出すだけでもだいぶ違う。登るまでに時間があるなら、近くの低山に登ったり、階段を上り下りしたりするといった準備もお勧めできる。高山病で頭痛や吐き気、悪寒などを感じたら無理せず下山してほしい」
―疲労の軽減やけがの防止に役立つ歩き方は。
 「下界より酸素が薄いので深呼吸や腹式呼吸を心がけ、息が上がらないペースを保つ。十分な水分補給も重要だ。無駄な荷物は極力持たず体に負担をかけないようにしたい。歩幅を狭くし、ゆっくり歩くことを意識してほしい。小屋ごとに少し休むリズムがよい。下山時は疲労で踏ん張りが効かなくなり、浮き石などで転倒する事故がある」
 ―登山初心者が気をつけるポイントは。
 「山頂は気温がとても低いので防寒具は必須。富士山は独立峰で海に近く、雨が多くて風を遮るものもない。雷にも注意が必要だ。暗くなった時のためにヘッドランプ、滑った時のために手袋もいる。万が一事故が起きる可能性も考え登山保険やレジャー保険への加入を検討してほしい。日程によっては山小屋の確保も必要になる」
 「登りやすく、ポピュラーな登山に適した山だが、なめてかかると大変。5合目から山頂まで登る体力、脚力が必要なことを考えてから登ってほしい」

(文/生活報道部・草茅出、山本淳樹、写真/写真部・杉山英一、久保田竜平)

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