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小山町バス横転事故きょう1年 安全運転の再教育や啓発進む 現場対応強化の動きも

 小山町須走の県道(通称ふじあざみライン)で2022年10月に観光バスが横転し、29人が死傷した事故から13日で1年。自動車メーカー側の検証を経て事故原因はフットブレーキを多用することで効きが悪くなる「フェード現象」と結論付けられ、バス運行会社、道路管理者などはエンジンブレーキを効果的に活用した運転の再教育や啓発に取り組む。事故により、多数負傷者の現場対応の課題や難しさも浮かび上がり、消防など関係機関が訓練強化につなげる動きもある。

エンジンブレーキの使用などを啓発する看板や路面標示が設置された「ふじあざみライン」=12日午前、小山町須走(写真の一部を加工しています)
エンジンブレーキの使用などを啓発する看板や路面標示が設置された「ふじあざみライン」=12日午前、小山町須走(写真の一部を加工しています)

 「今年の富士登山シーズンは、多数のバス運行会社がツアー前に県道を試走していた。横転事故の啓発効果は大きい」。富士山須走口5合目で山小屋を経営する米山千晴さん(72)はこう振り返った。11月中旬までは紅葉を目的に訪れる観光客も見られ、「バス以外の車も油断せず、安全を心がけてほしい」と話す。
 新型コロナウイルス規制の解除やインバウンド(訪日客)の回復で、今季は富士登山者が昨年比で大幅に増加した。麓と須走口5合目を結ぶ同県道を使ったバスの乗り入れ台数も増え、各運行会社は安全管理に注力した。山梨交通(甲府市)は事故を教訓に各貸し切りバス営業所の乗務員に特別教育を実施。指導運転手を含めた複数人で同県道を区間試走し、フェード現象防止という基礎に立ち返って運転操作を見直した。
 ハード面の対策も進む。道路管理者の静岡県沼津土木事務所は急勾配でカーブがきつい6カ所にエンジンブレーキ使用を訴える看板を整備。「ギア 低速」の路面標示も設けた。バスが安全にすれ違えるようにカーブの拡幅も順次進め、既に8カ所で工事が完了した。
 事故発生時に隊員49人、緊急車両10台出動の総動員体制で対応に当たった御殿場市・小山町広域行政組合消防本部。同本部の17隊に加えて医療機関、陸上自衛隊、県警など多数の関係者が入り交じり、山間部という難しい条件の中で活動した。的確な対応を展開した一方、情報共有の難しさを痛感したという。経験を生かそうと、7月に職員の参加人数を例年より大幅に増やした負傷者多数の事故対応訓練を実施。他機関との密な連携手順も確認した。
 県内ではほかにも、磐田消防署などが小山町のバス横転事故を教訓とした多数傷病者対応訓練を行っている。同本部の勝間田誠司消防長は「訓練規模や内容を充実させ、関係機関との協力態勢をさらに強化する」と声に力を込める。
 (御殿場支局・塩谷将広)

 小山町の観光バス横転事故 運行会社「美杉観光バス」(埼玉県飯能市)の観光バスが2022年10月13日午前11時50分ごろ、富士山須走口5合目から県道を下る途中、フェード現象が発生して時速約93キロまで加速。右カーブを曲がりきれず、道路左側ののり面に乗り上げて横転した。乗客の女性1人が死亡、28人が重軽傷を負った。元運転手は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮2年6月の判決が確定した。県警は業務上過失致死傷の疑いで、同社の運行管理者だった男性会社員を静岡地検沼津支部に書類送致した。

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