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テーマ : 函南町

大自在(6月11日)元も子も

 自治体の貯金に当たる財政調整基金を株の短期売買や不動産投信で運用した騒動が2004年に函南町であった。当時の本紙によると、投資額は株と不動産投信で計4億円余り。運用益は半年で約3千万円に上った。
 町はペイオフ対策と説明したが、議員から待ったがかかった。県も町に口頭でこう助言していたという。「株式売買は不確実な運用。現在、市場で損をしていないだけとみるべきで、安全性が保証されていない」「行政としてより安全な管理を行うべき」。
 18年がたち「新しい資本主義」を掲げる岸田政権が家計に株などの金融商品への投資を促す「資産所得倍増プラン」を打ち出した。国民に勧めるのはよりリスクの低い長期投資だろうが、時代の流れを感じる。
 04年当時、1万1千円前後だった日経平均株価は08年のリーマン・ショックで7千円台まで下落し、元の水準に戻るのに数年かかった。今でこそ2万円台で推移しているが、函南町があのまま運用を続けていたら底値時に町民に何と説明できただろう。
 投資は余裕資金で行うものと聞いてきた。岸田政権にはどれだけ国民に余裕があると見えているのか。公的年金や生活保護費は引き下げられ、貧困にあえぐ人は増えている。働けど暮らしは楽にならず、中間層もゆとりはない。
 貯蓄から投資へと促し、国民の虎の子が元本割れしては元も子もないだろう。利子どころか元本も失うとはまさに元も子もないの由来。国民の貯金が株式市場に流れても実体経済を改善する政府の努力が伴わなければ元も子もない。

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