テーマ : 教育・子育て

スマホ・ネットの家庭内ルール どうしてる?⑤ キュレーター/読者の意見【賛否万論】

 スマートフォンやネットの家庭内ルールについて、前回までに寄せられた投稿には、「親もけじめをつけた使い方を」「使用による怖さを伝え、子の自制を促す」といった保護者への注意喚起を呼びかける声の一方、「もはや体の一部。徹底的に使ったら」や「今の時代、スマホやネットが使えない方が問題」と活用することに対するメリットに注目する意見もありました。今回も引き続きキュレーターと読者の意見を紹介します。

衝突恐れず 子どもと対峙
キュレーター 松浦静治さん(島田市)


 

 

任意団体Study Like Playing代表。20年間の小中学校教員生活の後、早期退職して地域で子どもを育む活動を実践。フリースクール、寺子屋、自然体験教室等を展開。
 

 「スマートフォンやネットにはどんなメリットやデメリットがあるのかを知りましょう。保護者と子どもが話し合ってルールを定めて、それを守るようにしましょう」。至極当たり前のことですが、それができていないからトラブルが起きているわけです。
 スマホやネットにはどんなメリットやデメリットがあるのか、情報が簡単に入手できる状況にあるからでしょうか? 学校では年に1、2回くらい授業時間を使ってその勉強をするでしょう。授業参観に合わせて、保護者にも知ってもらえるようにしている学校もあるでしょう。しかし、それで十分ではないからトラブルが起こっています。スマホやネットのメリットやデメリットについて、分かりやすく情報提供されているのかどうか、まずは調べてみることが必要です。案外、ネットですぐ見つかる情報は子ども向けが少ないことに気づくかも知れません。
 次に、保護者と子どもが話し合って決めたルールが、守られているかどうかが課題です。私は放課後の寺子屋活動をしていて、日常的に子どもたちや保護者の皆さんと接していますが、気になっていることがあります。それは、子どもがマウントを取っている家庭が多いということです。保護者が子どもの言いなりになってしまっている家庭が結構あります。「ずっとスマホばっかりなんです」「いくら言っても止めなくて」「無理にやめさせようとすると怒って暴れるんです。発達障害でしょうか」という相談を受けることもあります。私は発達障害の診断を下せる立場にはありませんが、教員生活20年の経験から言うと、発達障害だと思い込んでしまうのは早計だという場面が多くあります。子どもが「自分が駄々をこねれば、お父さんやお母さんは折れて、自分の要望を認めてくれる」と思ってやっているということが多く見受けられます。子どもとの衝突を恐れて子どもの要望を通してしまうのではなく、しっかりと子どもと対峙[たいじ]することが大切だと思います。ただし、子どもを服従させて、子どもの意思を無視してしまっている保護者もいるので、一概に言えないのも事実です。
 そう考えると、保護者も子どもも信頼して相談できる人や場所があるかどうかが大事です。できたらどこか1カ所ではなく複数の人や場所とつながっていられたら、トラブルを未然に防いだり、万が一起こっても問題が大きくなる前に対処できたりするのではないでしょうか。

時間管理、善悪判断の教育が最優先
読者 大橋正博さん(焼津市)73歳

 家庭内のスマホ・ネットルールについて考える前に、まず親はこれらのルールが無くても、子どもが自ら使用する時間の管理ができ、これらから知る内容の善悪などを判断できるよう教育することが何より重要であると思う。
 子ども自身が前述の判断ができて、自己の中でルールを考えて律していくように育っていけば、他の事柄についても自らが考え、自制できる大人になるだろう。そのためにはまず、大人である親がその姿勢を見せなくてはならないと思う。
 私たちの年代では子どもの頃、テレビが普及し見る時間と勉強などをする時間の問題が生じた。振り返ってみると、親に言われなくても自らが番組の善しあしや見る時間を決めて、テレビを楽しみに勉強にも熱心に取り組んでいた。何をするにもこうした姿勢で大人になっていった。
 時代が変わり、スマホやネットの時代になっても、親の姿勢と子どもの自主性や自立性の重要度は不変であるのではないかと、改めて考えさせられた。

家庭への社会の関与 線引き困難
読者 大島宏幸さん(長泉町)60歳

 今回のテーマは家庭内のルールについてで、個々の家庭で教育方針や価値観が違うから、読者の関心度があるのかどうか考えていた。保護者の半数近くが不安や悩みを抱えているみたい。スマホを持たせないならば、ネットトラブルに巻き込まれない。だが、持っていないと友人とのコミュニケーションに支障がある。トラブルを起こせば、自己責任だよね―と言いたい。社会全体で見守る必要があるという意見もあると思う。だけど、他人の家庭のことに、どこまで関与するのかの線引きが難しい。
 学校から利用についてのガイドラインを出してくれ、とかは筋違いな話だと思う。そうはいえども、指導をしない学校に責任があるとか言う保護者もいるだろう。保護者が、スマホの扱いに詳しければ良いけれど、そんなことはない。ネットトラブルを防ぐために学校が何らかの指導をする必要が出てきそう。そうすると教員の仕事が増えることになる。教員の残業時間が減らないな。
 10月14日の朝、NHKの番組を見ていて「後払いチャージ 未成年の利用は」のニュースが気になった。子どもが保護者に無断でアプリを入れて、後払いチャージを利用しているとのこと。ニュースでは、コンビニ系銀行と言っていた。セブン銀行は13歳以上ならば、ポチッとチャージができる。利用規定にも「法定代理人の同意を得て申し込み」とある。ネット申し込みだと審査も緩いだろうから、容易に申し込みが可能だと思うけど。外部サービス事業社と提携してのサービスだが、未成年のトラブルを想定していないのだろうか。セブン銀行にしては、詰めが甘いなと思う。他にも審査なしで登録できる後払いアプリがある。
 賛否万論で今回のテーマを読んでいたので、このニュースに関心を持った。新聞記事で注意喚起をしないとトラブルに巻き込まれることが多くなりそう。後払いチャージの対象年齢が13歳以上だとトラブルになることは容易に考えられる。
 静岡新聞社には、「未成年の後払いチャージ利用」も問題点として切り込むことを期待する。問題点は、いじめの温床、スマホ依存、性被害だと考えていたけれど、問題が山積していると感じる。ネットを利用して新しいサービスができて便利になる反面、リスクも高まっている。企業側はリスクマネジメントにもっと取り組み、利用者側もネットリテラシーを学ぶべきだ。やはり学校でネットリテラシー教育をしないと危ないのかも。保護者には、紙面で注意喚起ということになるのか。でも、新聞を読まない人には情報が伝わらず、もどかしい。新聞を読まない人が情報弱者でトラブルに巻き込まれるならば自己責任で仕方ないか。

メリット、デメリット 定期的に話し合いを
読者 座光寺明さん(磐田市)66歳

 青少年が巻き込まれる事件、性犯罪やドラッグ、金銭トラブルなどの多くがスマホやネットによるものです。スマホは小学生で3~4割、中学生になると7~8割が所持しているそうです。そして多くの保護者は、わが子のスマホ使用実態に不安を持っていて、口論になった経験も多いという調査結果も出ています。
 講師をしている大学で、スマホのメリットとデメリットについてグループ討議をしたことがあります。メリットの方が多かったのですが、学生からは「費やす時間が多い」「SNS(交流サイト)などの未確認情報に惑わされる」「他のことに集中できない」と言った意見が出ました。これらのデメリットは考えたことがなかったです。その結果、「使用に気をつけたい」との意見が大半でした。
 青少年期は親から注意を受けると反発したくなる年頃です。問題が起こってから注意するのではなく、普段から定期的にスマホのメリットやデメリットについて話し合う機会をつくっておくことがトラブルの抑制につながると思います。
 また保護者がスマホに夢中になり乳幼児を放っておくケースも多いとの調査結果も出ています。スマホに夢中になっている親の様子を描いた「ママのスマホになりたい」という絵本・動画は世界中の保護者に衝撃を与えました。スマホやネットは便利なものですが、節度ある使い方を考えたいですね。

 

 キュレーター 「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。
 次回も同じテーマでしずしんニュースキュレーターや読者の意見を紹介します。
ご意見お寄せください  あなたの家庭のスマホやネットのルールはどうなっていますか? どこまで関与すべきだと考えていますか? 幅広い視点の投稿をお待ちしています。
 宛先は〒422―8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「賛否万論」係、<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>

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