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小学校高学年の授業数、1日6こま「充実せず」77% ベテラン教員が回答

 小学校高学年の授業数について、週6日制の1990年代と、週5日制で1日6こまが一般的になった現在の双方を知るベテラン教員に尋ねたところ、77%が週当たりの総数は同じでも現在の方が「子どもの学習が充実しない」と考えているとの調査結果を東京学芸大の大森直樹教授(教育史)が公表した。大森教授は「授業数が多すぎて子どもの生活や学習に合っていない」と述べ、削減が必要だと説明した。
静岡県内小学6年生の予定表。この週は6こまの日が2日あった
 標準の授業数は、教育の機会均等や質の確保のために学校教育法施行規則で定められていて、学習指導要領ではこれを下回らないよう求めている。同要領改定に合わせて約10年ごとに見直されていて、小学校6年間の総数は80年度~2001年度が5785こまで、02年度に減ったが「ゆとり教育」批判で増加し、現在は5785こまに戻った。
 このうち小4~6年はいずれも年間計1015こま。平均授業日数から単純計算すると1日あたり5~6こまと考えられる。1990年代ごろと比べると、総数は同じでも週休2日が原則になったため、高学年で連日6こまが当たり前の状況だ。
子どもの学習が充実しないと回答した教員の割合
 調査は、授業数が「子どもの生活に合っていたか」と「子どもの学習は充実していたか」を尋ねた。「高学年でおおむね週に6日間、29こまの授業」(92年度~2001年度)と、「高学年でおおむね週に5日間、29こまの授業」(現在)の両方を知る教員487人の回答を中心に分析した。
 1990年代の授業数が「生活に合わない」は23%にとどまったが、現在の授業数では90%に上った。「学習が充実しない」も90年代は9%で、現在の77%と差がついた。
 現在の授業数しか経験していない若手教員ら248人の回答では「生活に合わない」44%、「学習が充実しない」28%となった。
 自由記述では「不登校の増加もゆとりが減ったことに関係があるのではないか」「放課後の時間を増やすことが、子どもの自主性や協調性を育む」などの意見があった。
 大森教授は「子どもの時間は有限」と指摘し、適切な授業数を再検討した上で指導要領を見直すべきだと主張した。
 調査は昨年、教育文化総合研究所(東京)と協力して実施し、現役と退職した公立小の教員計2445人が回答した。

 実態に合わせ 各校が決定
 授業数は、各学校が標準の授業数を踏まえ、子どもや地域の実態に合わせてそれぞれ決めている。地域学習や特別活動を充実させるなど学校ごと特色を出すケースもあり、近隣の学校同士でも授業数が異なる場合もある。
 県教育委員会によると、県内の公立全小(静岡、浜松両市を除く)6年生は平均1030・3こま(標準の授業数は1015こま)で大部分が平均前後という。静岡、浜松両市教委は「標準を大きく上回る学校はない」としている。
 授業数を巡っては教員確保策を話し合う中教審の特別部会が昨夏、標準を大きく超える学校が一定数あるとして、削減を提言している。
 文部科学省が昨秋に全国の教育委員会を対象に行った調査では、標準の授業数を大きく上回る学校に対して2024年度以降の見直しを求めて指導助言を実施したか尋ねる問いに対し、県と県内35市町の各教委のうち27の教委が「実施した」と回答した。
 (教育文化部・鈴木美晴)

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