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「ロイロノート」普及、急拡大 ICT活用、授業支援システム 伊豆の国出身の兄弟が開発

 伊豆の国市出身の兄弟が創業したソフトウエア会社「ロイロ」(横浜市)が開発した、ICTを活用した授業の支援システム「ロイロノート・スクール」の導入がコロナ禍を機に、全国の学校で急拡大している。静岡県でも全市町の約半分にあたる17自治体が導入。学校現場ではICT端末と同システムを活用した効果的な教育の模索が続いている。

認定ティーチャーによる、ロイロノート・スクールを活用した授業=沼津市の加藤学園高
認定ティーチャーによる、ロイロノート・スクールを活用した授業=沼津市の加藤学園高

 ロイロノート・スクールはタブレットを活用し、生徒や教員同士で対話型授業を実現するためのツール。ノートの添削や課題のやりとり、子ども同士の意見共有、調べ学習、動画撮影、資料配布、発表用の資料作成など多目的に活用できる。
 同社によると、コロナ禍に伴う全国一斉休校をきっかけに、学校現場でのデジタル端末導入が加速。全国の小中学生に端末を1人1台配る国の「GIGAスクール構想」が発表された2019年冬から、今秋時点までで利用者数は23倍、全国での導入自治体数は12倍の680自治体に拡大した。
 文部科学省によると、本県のICT端末活用状況は全国平均を上回る。ロイロノート・スクールは、私立小中高22校、県立高は3分の1以上の29校が導入した。
 沼津市の加藤学園高も、20年春のコロナ禍に伴う休校のタイミングでICT端末と同システムを導入した。同校で進路指導を担当する教員は「休校期間中も進路指導や課題のやりとりを継続できた。入試直前まで生徒の個別指導ができるので、なくてはならない存在になっている」と導入後の変化を語る。プロジェクターなどの機材準備の手間をかけずに動画視聴ができる利点もあるという。
 ICT端末の急速な普及に伴い、学校現場で課題になっているのが効果的な活用方法だ。同社は授業で同システムを積極的に活用する教員を「ロイロ認定ティーチャー」として認定。多忙な教員がICT教育を学べる機会として、教員向け研修を開いている。
 同校では今秋、1、2年生210人を前に、全国各地のロイロ認定ティーチャー8人を招いた公開授業が行われた。グループワークの成果を回収し、大画面で示しながら議論を進めたり、さまざまな意見を図解にまとめたりと、具体的な活用方法を紹介。県内外の教員約100人が見学し、授業後は認定ティーチャーによる教員向け講座や情報交換会も実施した。
 ロイロは2007年、代表取締役の杉山浩二さん(46)と兄の杉山竜太郎さん(48)が共同創業した。ロイロノート・スクールは、主力商品の動画編集ソフト「ロイロスコープ」を教育用に応用し、教員の意見を取り入れながら開発したソフトだ。杉山浩二代表は「学校教育は詰め込み型からアウトプット型に変化している。子どもの創作意欲を促す使い方が生まれてほしい」と期待する。
 (東部総局・菊地真生)

 端末整備ほぼ完了
 2022年度末の文部科学省の調査によると、2自治体を除く全国の小中学校、特別支援学校等で、1人1台端末を使用する環境が整備された。校内ネットワーク環境も同年9月時点で、全国の公立小中高の99・9%で整備が完了した。
 GIGAスクール構想の発表以降、ロイロノート・スクール以外にも教育用タブレットで活用できるアプリが普及した。グーグルフォーエデュケーション(グーグル)、マイクロソフト365エデュケーション(マイクロソフト)、メタモジクラスルーム(メタモジ)などがあり、双方向の授業や個別学習に活用されている。

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