テーマ : 教育・子育て

学ぶ喜び 実現するために【思春期の心 支える力 受験③】

 学ぶことは本来喜びです。分からなかったことが分かる喜び、できなかった問題が解けていく喜び。受験勉強では勉強が喜びだなどとはなかなか思えませんが。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 奈良時代には日本語に母音が八つあったらしいとか、宇宙の果てを探ることで地球の生い立ちを発見することができるなど、さまざまなことに疑問を抱き、考え、分かっていく。学ぶ醍醐味[だいごみ]と喜びは身の回りに限りなく潜んでいます。
 学ぶ喜びをどうしたら子どもたちに伝えられるかと、先生方は、教材を考え、教え方を工夫しています。ところが、そうした学校での取り組みがどんなに面白く興味を引くように行われても、入学試験では、大学入学共通テストに見られるように、短い制限時間の中でいかに正確に問題を解くのかが求められます。そこで合格点を取るためには、多くの知識を覚え、問題を速く解く力を身に付けなければなりません。この点が学校現場での工夫との最大の相違点です。
 人工知能が開発され、人間の能力の在り方がますます問われるようになってきました。そのため、答えのある問題を速く正確に解くのではなくて、答えが見つからなくても、いかに新しい問いを発見して解決策を考え出していくのか。これがこれからの社会で求められる「学力」だと言われています。
 大学受験を目の前にして、「こんな勉強が何の役に立つのかと急に疑問を抱いて、受験勉強に集中できなくなった」と相談に来る生徒がいます。まず、「学ぶ喜び」と「受験に通る学力」は異なるところがあることをしっかり理解した上で、「どういう大学で、どういう学部に行って何を学びたいのか、そこをはっきりさせることが勉強への強い動機付けになる」と話しています。学ぶ喜びの実現は、その先に拓[ひら]けていくように思います。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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