テーマ : 教育・子育て

大切な人失った子どものケア 自然な感情表現 尊重して 無理な励ましや干渉 逆効果 高橋聡美さん(中央大客員研究員)

 災害や事件、事故などで大切な人を失った後に抱くグリーフ(悲嘆)。悲しみに包まれた子どもに寄り添うには「グリーフケア」に対する基本的な理解が必要だ。中央大の高橋聡美客員研究員は「グリーフの表現は悲しみや愛惜、怒りなどさまざま。子どもの主体性を尊重することが大切で、無理な励ましや干渉は逆効果です」と語る。

グリーフプログラムの一環で、絵を描いて遊ぶ子どもたち(あしなが育英会提供)
グリーフプログラムの一環で、絵を描いて遊ぶ子どもたち(あしなが育英会提供)
高橋聡美さん
高橋聡美さん
グリーフプログラムの一環で、絵を描いて遊ぶ子どもたち(あしなが育英会提供)
高橋聡美さん


 死別を体験した子どもの反応は、100人いたら100通りあります。イライラして攻撃的になったり、葬儀ではしゃいでしまったりする子もいれば、気力をなくしてふさぎ込んでしまう子もいます。いずれも心のバランスを保つための反応で、問題行動や病気と捉えず、見守ってください。
 何事もなかったように落ち着いて見える子でも「本当はつらいはず」という決め付けや、「悲しい気持ちを話してほしい」といった強要はしてはいけません。ありのままの自然な感情表現や態度を尊重し、大人は焦らず「気持ちを話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝え続けることが大切です。
 一般的に、子どもが死を理解できるようになるのは10歳前後といわれています。「まだ子どもだから分からない」と考えがちですが、幼くても、大人が話す内容や表情などを見て、その年齢なりの死を感じています。
 大切な人の死について、子どもは本当のことを知る権利があります。年齢や理解力に合わせ、可能な限り事実を伝えることも大切です。自死のケースなど複雑な事情がある場合は「説明できる日が来たらお話しするね」と伝えるなど、伝える側の大人も無理はせず、それぞれのペースで進めてほしいと思います。
 子どもを対象としたグリーフプログラムは、あしなが育英会が神戸市や仙台市で運営する「レインボーハウス」など、全国約30カ所で行われています。自由な遊びの時間を中心とした内容で、子ども自身が体験を語る時間もありますが、何も語りたくなければパスできます。
 遊びは、子どもがグリーフに対処する大切な手段です。例えば、東日本大震災を体験した子どもたちは、ブロックを積んで作った街を崩しては直すといった遊び方をすることがありました。地震や津波など、どうにもならない脅威を体験した子どもには、自分で選び、コントロールすることができる遊びが必要です。
 心が未発達な子どもへの支援は、長期間継続する必要があります。専門家だけでなく、身近な大人が日常的にどう関わるかも重要です。最寄りの団体の活動内容について調べるなど、まずはグリーフケアについて知ることが支援の第一歩になります。
 (談)

いい茶0

教育・子育ての記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞