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特別支援学校 教室不足解消、静岡県内道半ば 普通学校との「分離」見直しの声

 障害のある子どもが通う特別支援学校の在学者数が全国で増加し、自治体や学校が教室の確保に追われている。県内も同様の傾向で、県教育委員会は施設整備を進めているが、教室不足解消は道半ばだ。他方、国際的には、障害の有無にかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が主流に。「学びの場の分離を立ち止まって考え直すべき」と言う声は県内からも上がっている。

(提供写真)「静岡の未来を拓く会」がPTAを対象に拓いた共生社会がテーマの研修会=静岡市内(同会提供)
(提供写真)「静岡の未来を拓く会」がPTAを対象に拓いた共生社会がテーマの研修会=静岡市内(同会提供)
県内特別支援学校の在学者数の推移
県内特別支援学校の在学者数の推移
(提供写真)「静岡の未来を拓く会」がPTAを対象に拓いた共生社会がテーマの研修会=静岡市内(同会提供)
県内特別支援学校の在学者数の推移


 文部科学省によると、全国の小中高生などの数は減少する一方、特別支援学校の在学者数は年々増え、今年5月時点で計15万人余となった。県内は5060人で、約20年間で1・8倍になった。増加の大部分を占める知的障害は、2030年度頃がピークになると見込まれている。
 同省の調査によると、在学者数の増加により21年10月時点で全国の公立特別支援学校で計3740の教室が不足。特別教室の転用、教室の間仕切り、倉庫や準備室の転用などの対策が講じられているものの、授業に支障が生じているケースも多いことが明らかになった。県内では94教室が不足し、このうち24年度までに解消が計画されているのは16教室にとどまった。
 県教委は施設整備の基本計画を策定し、本校や分校の開校を進めている。特別支援教育課によると、県内には国立と私立も含めて現在42教場があり、御殿場特別支援学校小山分校の来年開校をはじめ3つの計画が具体化している。だが、教室不足解消の見通しは立っていないという。
 特別支援学校の拡充の方向性には異論もある。国連の障害者権利委員会は昨年9月、障害のある子どもが分離されているとして、特別支援教育の中止を日本に勧告。文科省は「可能な限り共に教育を受けられるように整備する」とするが、永岡桂子文科相(当時)は勧告後の記者会見で「中止は考えていない」と述べ、現状維持を前提とした。
 同省は在学者数増の理由について「障害や特性に応じた教育への理解が広まった」と話す。しかし、全国の当事者団体には勧告後も「地元の小学校に入りたいが、教育委員会が認めない」との相談が絶えず、特別支援学校を積極的に選んだとは言えないケースも含まれそうだ。
 障害のある子どもの学びの場を特別支援学校などとして、普通学校(特別支援学校でない学校)と分離する現状を見直そうという機運は県内にもある。静岡市内の現役・退職の教員や保護者らでつくる市民団体「静岡の未来を拓く会」は、インクルーシブ教育や共生社会の構築をテーマにした勉強会を続け、11月には市内のPTA会員を対象にした研修会も開いた。
 研修会で講師を務めた同会共同代表の寺谷正博さん(62)は「障害のある子どもの個別のニーズに応じた教育は、環境整備を行った上で、障害のない子どもと共に行われるのが原則」と主張する。子どもの頃から障害のある子どもとない子どもが日常的に接することが、障害への偏見や抵抗の解消につながると説明。障害の有無だけでなく、発達に凸凹がある子ども、外国にルーツのある子どもなど、多様な子どもが分離されずに共に学ぶことができるようにするため教育現場に人的・物的資源を充実させる必要性を訴える。
 (教育文化部・鈴木美晴)

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