テーマ : 教育・子育て

教員の休職深刻化 過剰な業務に心が疲弊 文科省、抜本解決示せず

 「心の病」による教員の休職が深刻化していることが2022年度の文部科学省調査で明らかになった。近年は新型コロナウイルス予防や新たな教育課題への対応を迫られる場面が増え、過剰な業務が要因とも指摘される。同省が推進する学校の働き方改革は不十分。メンタルヘルス(心の健康)を保つ有効な対策は、まだ示せていない。

主なメンタルヘルス対策
主なメンタルヘルス対策


 「帰宅すると何も手に付かず、週末は起き上がれなかった」
 関東地方の公立小に勤める50代教諭は昨春、積み重なる業務に苦悩していた。学年全体の運営方針、給食のコロナ防止策、校外学習に向けた外部調整-。ベテランとして責任があると焦った。若手ばかりで気軽に相談できる同年代が少ないため、孤立したような気分に。担任するクラスには、外国籍で日本語が不得意な児童が複数いるため丁寧な指導も欠かせなかった。
 教諭は「休むか休まないかで揺れていたが、子どもたちへの思いで踏みとどまった」と振り返る。精神科で休養を勧められたことをきっかけに校長へ相談したのは1学期初め。業務を同僚に割り振ってもらうなどして休職を免れた。
 ある公立小校長によると、仕事の分担をしようにも人手が足りずに実現しないことがある。「(病休や産休の)欠員を埋められない『教員不足』が深刻化して、業務削減が難しい」と嘆く。
 文科省は負担軽減のため、授業以外の仕事を担う支援スタッフを増員する予算の獲得に努めてきた。今後は、保護者の過剰な要求などに校長OBらを活用し、教員が本来業務に専念できる体制の整備を進める。
 メンタルヘルスに関しては、神戸市など5自治体の実証事業に補助金を出し、効果的な方策を探っている。精神疾患で休職する教員の割合が1・29%で全国平均を上回る神戸市では、昨年4月からオンライン相談窓口や休職後の復職支援を拡充した。1人で仕事を抱え込まないという意識を強める取り組みにも力を入れている。
 文科省担当者は「具体的な解決策が必要」と危機感をにじませる。今年3月にも実証事業の結果をまとめ、各地へノウハウを広める考えだ。
 ただ、政府が全小中学生にデジタル端末を配った「GIGAスクール構想」に象徴されるように、時代に応じて新たな学習指導が学校に導入される。指導手法を身に付けるのに研修や教材研究の時間が重要となるが「文科省はその分の授業時間や業務を削る姿勢に乏しい」と批判する教育関係者は多い。
 九州地方の公立小教諭は心の病の増加について「文科省の対症療法的なやり方だけでは不十分。業務量自体を大幅に減らし、不足する教員を増やす根本的な解決策に取り組むべきだ」と切実に訴えた。

 詳細な実態把握を
 教育研究家の妹尾昌俊さんの話 精神疾患で休職したり病気休暇を取ったりする教員は小学校と特別支援学校で特に多い。休憩が取れず、授業準備に追われ、張り詰めた状態が続いているのだろう。年代別では20代の割合が高く、若手教員をケアする余裕が周囲にないことが影響しているのではないか。人手を増やして仕事量を減らすことや、早期に医療的な相談ができるよう保健師らが学校を巡回する制度などを推進するべきだ。さらに問題なのは対策の前提になる原因分析が足りていないことで、文部科学省は詳細な実態把握をしなければならない。

いい茶0

教育・子育ての記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞