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静岡県内の通信制高なのに? 「他県認可」授業料補助受けられず 専門家「公平性に問題」

 不登校の子の受け皿として注目される静岡県内の私立通信制高校のうち、他県認可の学校に在学する生徒が県の授業料補助を受けられず、県が認可した私立の通信制や全日制の高校に通う生徒との間に格差が生じている。県は「財源に限りがある」と理由を説明するが、専門家は「公平性に問題がある」と指摘。県内の保護者などから負担軽減を求める声が上がっている。
県内の私立通信制高校に対する授業料補助のイメージ
 「全日制と比べて行政の支援が少ないと感じる」。こう話すのは静岡市内にある他県認可の通信制高校に長女が通う保護者。2024年度に高校生になる次女も別の通信制高校に進学を希望していて「2人目は負担感が強い」と明かす。
 県によると、年収に応じて国の支援金に上乗せされる県単独の授業料補助は県が認可した学校が対象のため、他県の認可校に通う場合は県民でも補助を受けられない。補助される場合との格差は最大で年間約18万円。一方、県内にある静岡県の認可校に通う他県の生徒は静岡県民の税金から補助が支払われる“矛盾”も生じているという。
 教育関係者によると、中学で不登校の場合、全日制高校への入学はハードルが高いとされ、私立通信制高校が受け皿になっているが、授業料を含む学費負担を理由に通信制高校への進学を断念する保護者は少なくないという。
他県で認可された通信制高校のサテライト施設。入学希望者が増えているが、県民でも県の授業料補助が受けられない=12月上旬、静岡市葵区のつくば開成高静岡校 県内に5拠点を置く広域通信制高校「つくば開成高」静岡校(茨城県認可)の鮫島功キャンパス長は「同じ県民なのに認可者の違いで支援に差が出るのはおかしい」と話す。通信制高校の在り方を検討する文部科学省有識者会議委員の日永龍彦山梨大教授(教育行政学)も「県内の高校生が学校教育法で認められた高校を選んだのに、他県認可を理由に補助を受けられないのは法の下の平等に違える」と問題視する。
 支援の地域差も生じている。東京都は都民の保護者を対象に21年度から他県認可の通信制高校の授業料を全日制と同じ水準で補助していて、大阪府も同様の制度を24年度に創設予定。静岡県私学振興課は「(県民間や都道府県間の差は)課題として認識しているが、財源や事務処理の問題もあり、どこかで線引きしなければならない」とした上で自治体間の財政力の違いに触れ、「国が(全額補助する)完全無償化へ動いてほしい」と強調した。
他県認可校、圧倒的多数 全国から参入進む 全国展開する広域通信制高校 県内の私立通信制高校は、知名度の高いN高をはじめとして全国展開する広域通信制の他県認可校の数が圧倒的に多い。県が認可した通信制高校は現在、キラリ高1校だけ。複数の県内教育関係者は「県が通信制高校の認可に慎重だったため、結果的に他県の認可校による県内参入が進んだ」と解説する。
 広域通信制高校の本校は北海道、茨城、沖縄県に多く、本県には面接指導や添削指導の場となるサテライト施設(分校など)が設置されている。その多くは静岡、浜松、沼津の主要駅近くに立地する。
 通信制高校はICTを活用した遠隔授業など先進教育を進め、対面による個別指導を充実させるなど学校ごとに特色があり、近年は入学者数が増えている。学校教育法で認められた学校である一方、他県認可校は静岡県には指導監督権限がなく「状況を把握できていない」(私学振興課)という。教育関係者の間には「サテライト施設への行政の指導監督が不十分で、通信制の教育の質は玉石混交だ」とする見方もある。
(社会部・大橋弘典)

 

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