テーマ : 教育・子育て

「適応指導教室」進まぬ改称 文科省が変更推奨も 静岡県内温度差、当事者「自分は不適応なの…」

 不登校の子どもの受け皿になっている学校外の公的な支援拠点「適応指導教室」の名称変更が県内で進んでいない。文部科学省は保護者からの「違和感がある」などという声を踏まえて2019年度に「教育支援センター」に変更し「適応指導教室」の使用をやめた。自治体に対しては「改称が望ましい」(同省担当者)としているが、県内では「適応指導教室」を使い続ける市町があり、対応が分かれている。

教育支援センターのパンフレット。上と右は浜松市が改称した「校外まなびの教室」。左下は静岡市の「適応指導教室」
教育支援センターのパンフレット。上と右は浜松市が改称した「校外まなびの教室」。左下は静岡市の「適応指導教室」


 「自分が不適応だと言われているようだった」。不登校経験のある県内の男性(20)は当時を振り返る。不登校の子を支援する関係者の間には「呼び方が通常の教育体系から外れていることを表している」などと受け止める声も根強い。
 「適応指導教室」を使っている静岡市は今のところ改称しない方針。担当者は従来からの名称が一定程度浸透しているためだと説明する。同じ政令市でも浜松市は今年4月に「校外まなびの教室」に改称した。担当者は「私たちは問題ないと考えていたが、改称を求める保護者や市議の意見を受けて思い切って名前を変えた」と明かした。改称による不都合はないという。
 文科省は03年度に「教育支援センター」の呼称を併用し始め、19年度に完全に切り替えた。昨年6月に「不登校児童生徒や保護者の抵抗感を減らし親しみやすいものにするために工夫した名称に」と自治体にも通知を出した。今年8月には「不登校特例校」の呼称を「学びの多様化学校」に改め、国レベルでは関係施設の名称への配慮が強まっている。
 不登校の問題に詳しい常葉大の太田正義准教授(教育心理学)は「名前の呼び方だけでなく意識の問題。適応指導教室に通う子どもが不適応と取られかねないので改称した方がいい」と指摘する。
 (社会部・大橋弘典)

 教育支援センター(旧適応指導教室)
  不登校の子が相談や指導を受けられる場。指導内容は集団生活への適応、情緒の安定、基礎学力の補充、生活習慣の改善など。市町が学校以外の公共施設に設置することが多いが、学校内に設置する場合もある。教員免許を持つ人が指導するケースが多く、公的機関なので利用料はかからない。「運営や雰囲気が学校と似ている」として拒否反応を示す子もいるという。

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