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背骨の曲がり放置しないで 思春期特発性側彎症 装具で進行抑止

 背骨が大きく湾曲してしまう側彎[そくわん]症。小児期に発症し、多くはねじれを伴う3次元の変形となる。紀元前から知られていたが、原因の多くはいまだに不明。いち早く見つけ、装具で進行を抑えることが重要になる。

AIS治療用の新装具の着け方を説明する日本シグマックスの開発担当者
AIS治療用の新装具の着け方を説明する日本シグマックスの開発担当者
AISの装具療法(写真は提供)
AISの装具療法(写真は提供)
AIS治療用の新装具の着け方を説明する日本シグマックスの開発担当者
AISの装具療法(写真は提供)

 側彎症は奇形椎骨が原因の先天性のほか、脊髄空洞症などの病気でも起きるが、80%は原因不明の特発性。さらにその80~90%を10歳以降に発症する思春期特発性側彎症(AIS)が占める。
 ほとんどが女児で、学童の有病率は約2%。「クラスに1人はいる計算で、決してまれな病気ではない」と福島県立医大会津医療センター整形外科の白土修教授は語る。
 早期発見のため1978年に学校検診が法制化され、患者の多くはここで見つかる。ただ上半身裸になる検診は思春期の女児には難しくなっている。その分、家庭での親の注意が重要。白土さんは「日常生活や入浴時に子どもの背中をチェックして」と呼びかける。
 ポイントは肩の高さの左右差や肩甲骨や肋骨[ろっこつ]の盛り上がり。前屈姿勢にすると背中の片側の隆起が分かりやすい。

 手術は負担大
 背骨の湾曲が始まっても多くは無症状で、検診で指摘されても放置されることも多い。成長期の間に進行し、生活に支障を感じて受診しても、既に手術しか治療法がないことも珍しくない。
 湾曲は「骨年齢が若いうちと初潮の前後1年が進みやすい」(白土さん)といい、早期対処が重要になる。側彎症の程度は主に、背骨の上下で最も傾く二つの椎骨がつくる角度「コブ角」で判断する。
 進行に個人差があるため、コブ角が10~20度なら「経過観察」。20~40度で器具を着けて暮らして進行を抑える「装具療法」に移行し、それ以上なら「手術」となる。
 手術は背骨に沿ってビスを打ち込み矯正と進行防止を図るが、やはり体の負担は大きい。コブ角が40度を超えると、骨の成長後も湾曲が徐々に進み、長じて腰痛や座骨神経痛、さらには呼吸器障害になることも。
 白土さんは「装具でコブ角を40度未満に抑え、手術を避けるのが治療の目標となる」と語る。

 軽く目立たず
 装具は20世紀半ばに米国で開発されたミルウォーキー型が最初だが、首輪に通した金属プレートで湾曲を矯正するため、装着しにくく目立つなど問題が多かった。その後、改良型も出たが課題解消とは言い難かった。
 骨の成長が終わるまで、1日18時間以上着けるのが理想だが、装具装着でからかわれたり、いじめられたりで、途中で脱落する子も多かった。
 この状況を憂えた白土さんは2016年、医療器具メーカー日本シグマックスなどと軽く、目立たず、着脱しやすい装具の共同開発を開始。全国7病院の患者59人を1年間追跡した臨床試験で効果を確認。23年10月から「体幹装具SF用パーツ」として販売を始めた。
 医師の指示で義肢装具士が患者に合わせ組み立てる。バックルで簡単に着脱でき、圧力も調整可能で着けても目立たない。保険も使え、従来の装具と費用は変わらない。白土さんは「時期を逃さず、長く装着できれば、手術を避けられる可能性が高まる」としている。

 

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