テーマ : 教育・子育て

個別最適な学びへ 宿題や家庭学習どう取り組ませる?⑥ しずしんニュースキュレーターと読者の意見【賛否万論】

 宿題や家庭学習など放課後の学びについて考察してきた「賛否万論」。前回は、子どもたちが個別に「学び」を深める機会として地域と連携した放課後の使い方に対する肯定的な意見が聞こえてきました。一方、子どもたちの自発的な学びが進まない一因として、学校から与えられる学習内容の多さや学んだことを発表する場が足りないという指摘もありました。個別最適な学びの推進には、環境整備だけでなく、教育現場や保護者の考え方をアップデートすることも重要だと考えられます。今回もキュレーターと読者から寄せられた意見を紹介します。
思い伝える練習の機会に
読者 ワタナベさん(静岡市駿河区)40歳
 宿題を「自分の思いを伝える練習」と捉えてはどうでしょうか? 宿題って面倒じゃないですか。私も2人の娘から「どうして宿題をしなくちゃいけないの?」と何度聞かれたことか。その度に「やりたくないなら『〇〇の理由で宿題ができなかった』とお母さんが一筆書くから無理にやらなくてもいいよ」と(優しく)言うのですが、「宿題をしないのは『悪』」と思っている娘はしぶしぶ取りかかります。その後、高確率で親子バトルになるのは想像に容易[たやす]いでしょう。
 宿題には一定のメリットがあると思います。基礎的な漢字や計算、音読に適度に取り組むことに異論はありません。では、宿題をしなかった場合はどうでしょうか。叱られる、勉強時間が減るなどのデメリットを想像します。そこで、宿題に対する気持ちを「見える化」し伝えようという提案です。
 「宿題をしなかった」という結果は一つですが、理由はそれぞれ。習い事で疲れた、塾や他の教材に取り組んだ、好きなことに熱中した、眠かった、体調が悪かった、忘れた、簡単(難し)すぎてやる気がしない等々。子どもは宿題に対して、「できた、できない」理由をふり返り、親や学校に自分の気持ちを示します。大人は子どもが出した結論を認め、いったん懐に収めます(たぶんこれが一番難しい…)。これを積み重ねて、家庭・学校での過ごし方や援助にフィードバックします。子どもにとっては自分の気持ちを客観視して伝える練習になり、大人は子どもの気持ちに気づき、毎度叱らずに次の手を考えることができるのではないでしょうか。
 たとえ「全員一緒」の宿題でも、するかしないか、どれをどれくらいやるか自分で判断して伝えられる力は、これからを生き抜くために必要な能力です。宿題以外でも、提示されたことに対して必要・不必要の二元論で争うのではなく、必要なことをすくい取り、共に考え、新しい道を見つけることができたらすてきだなと感じます。
「縦のつながり」が理想
読者 匿名希望さん(浜松市中央区)60歳
 「宿題や家庭学習どう取り組ませる?」とのテーマより視点がずれているかもわかりませんが、私が最初に感じた考えを文面にしてみました。
 私は「縦のつながりを持った学び」が理想と考えます。具体的には、学年を超えた縦のつながりで時間を共有することです。教室内では同一学年で学ぶ学校がほとんどです。この横のつながりで、同い年の友達との接し方は授業や休み時間を通じて時間の経過とともに学んでいくことができます。そのため、放課後には年上、年下の友達と時間を共有して接し方を学ぶことが重要となります。
 年上の子は年下の子の面倒を見ることで責任感を覚え、下の子の考えをくみ取るようになります。また年下の子は年上の子の言うことを聞くことで、目上の人に従うことを学び、協調性を養うことができるのではないでしょうか。
取りかかる環境づくりから
読者 グレーゾーンの子どものための学習支援教室「学びのいろは」代表 寺岡勝治さん
 私は発達に特性がある子どもの学習塾で指導しています。利用しているほとんどの子どもが自力で宿題に取りかかることができません。その理由は、ランドセルから宿題がパッと出てこないからです。学校に忘れていたり、かばんの底にたまっていたり、いろいろなプリントと混在していたり。家庭はおろか学校でも、すぐに学習に取り掛かれる状況になっていません。
 どんな宿題がいいかとかいう以前に、学習に取りかかりやすい状況をつくることが最優先です。家に帰ったら、プリントを教科ごとや保護者に渡すものに分別する。不要なものは捨てる。向きと角をそろえてファイリングする。えんぴつを削る。消しゴムがあるか確認する。それらが一人でできるようになってから「宿題にチャレンジしてみる」という段階を踏まえて、自主性を育んでいくといいと思います。
向き合う姿勢 習慣付け
読者 ひまじんさん(磐田市)68歳
 はるか昔の記憶の中にある「宿題」に関わる思い出をたどると、それは「やらされた」という思いしかない。何のためにやるのか考えず、ただ期日までに終わることにしか頭がなかった。教師は教育の専門家であるから、自分の中で何らかの目的を想定して宿題を出すのだろう。クラス全員に画一的な課題を出し、その結果の優劣を児童生徒個々の評価指標にするのは平等だし、教師にとって効率的ではある。
 思うのは、「宿題」に向き合うのはまだ「学ぶこと」の大切さを理解しない子どもたちだ、ということ。多くの子どもたちの中で、義務感からではなく自発的に宿題に向き合える子だけが、より知識を身に付けていく。宿題の狙いも授業の補完というより、子どもたちに「学びと向き合う姿勢」を習慣付けることにある気がする。
 以前の「賛否万論」で、教師の多忙な勤務実態についての意見があった。そんな状況では、宿題の出題や採点に手間暇かける余裕はないだろう。子どもの特性に合った出題など机上の空論。宿題をなくせば教師も楽だし子どもも喜ぶが、親は不安を抱く。結局、現状維持しかなさそうだが、それならせめて、宿題を出す狙いを子どもたちに理解させ、自発的に宿題に取り組むようにさせるのも教師の手腕だろう。
 私は社会人になってから、学生時代に真摯[しんし]に勉学に向き合わなかったことを後悔した。そしてそれは今も変わらない。子どもの頃に「学びと向き合う姿勢」さえ身に付ければ、知識は年を経るにつれおのずと積み上がっていくものである。

少しでも毎日続けられたら満点
キュレーター 高木有加さん(長泉町)


 

 

1男1女の母。ママ防災塾「マモルマムズ」代表。レンタルスペース「ママとこどものヒミツキチmorisbase」の管理人。ミッションは「孤独な子育て、ダメ、ぜったい」

 今回のテーマの初回記事(2月9日付)「2023年調査で静岡県の小学生は『塾などの時間も含めた授業以外の勉強時間が2時間以上』と答えた割合が全国平均を下回っている」に、「バンザーイ!」と思った私は変でしょうか。小学生が放課後に2時間以上勉強している方がよっぽど変だと感じます。6時間も学校で勉強してきたというのに、です。
 私は「毎日8時間以上勉強しなさい」なんて言われたら、絶対できません。学齢期の私は勉強が好きな子でした。母からはおそらく一度も「勉強しなさい」と言われていません。一方、同い年の兄の勉強している姿は、私の記憶の中では見たことがありません。母は同様に「勉強しなさい」とは言っていなかった気がしますが、とにかく本が好きだった兄はわが家の雑学王でした。
 放課後の時間をどう使うか、私は好きなことに使うのが一番だと思っています。勉強はその子に合う内容を、その子がやれる範囲で少しずつでも毎日続けられたらもう満点です。例えばそれが1日15分だっていいのです。
 友達と遊びたいのを我慢させ、いわゆるテストのために勉強をやらせて安心したいのは親。私も子どもたちには「宿題をやりなさい」も「勉強しなさい」も言ったことがありません。代わりに「今日はどんな宿題があるの?」や「勉強は何時からやる予定?」と軽く水を向けるだけ。せかされたり指示されたりしたら、誰だってやる気がそがれます。
 宿題がはかどらない日もあります。そんなときは「もう終わりにしたら?」と声をかけたり、問題をクイズ形式にして読み上げたりして楽しく終えられる後押しをします。宿題が“作業”になるなら、やる意味がないと思うのです。イヤイヤやっても嫌いになるだけ。「勉強は楽しい」と1日でも長く思ってもらえるため工夫しています。だって本来「知らなかったことを知ること」は楽しいことなんですから。
 中学生になると放課後の時間はどんどん少なくなります。小学生の放課後は貴重です。いっぱい遊び、やっつけ仕事にならない程度に宿題をやってしっかり眠る。大量の宿題よりも、自由な遊びの中で人と人とのルールや危険の線引き、多様なコミュニケーションを学ぶほうが、小学生にとってよっぽど大事ではないでしょうか。
次回のテーマは「賛否万論」振り返り<上>  次回は過去の「賛否万論」の振り返り<上>をお届けします。取り上げるテーマは「生成AIを学校現場で使うのはあり?」と「スマホ・ネットの家庭内ルール どうしてる?」。それぞれのテーマごとに有識者やしずしんニュースキュレーター、読者のご意見を担当記者らが座談会形式で振り返り、今後の課題などをまとめます。
 (テーマは変更する場合があります)

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