テーマ : 教育・子育て

成績は「価値」ではない(蔭山昌弘/スクールカウンセラー)【思春期の心 支える力 不登校③】

 不登校で相談に来た中学生の話です。「学校でクラスの仕事を率先してやっても、勉強の成績が悪いと親からも先生からもできないやつだと思われてしまう。自分が全否定されるみたいで将来に希望が持てない」「勉強を頑張って偏差値の高い高校に入れって言われるけど、そういう高校に入れるのはクラスの中でも一部。だから自分は駄目だという思いをずっと持って生きて行くのかと思ったらぞっとした」

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 一方、小学校の時から塾に通って勉強を頑張り、社会人になった教え子は「社会に出てみると、責任感とか行動力とか発想力とか、人としての力が評価されるのに、どうして子どもの頃にあんなに成績を気にして点数に振り回されていたのかと不思議な気がする。人生の土台を作る大事な時期だから、本当に学び身に付けるべき大切なことがあったと思う」。ホームルームや生徒会、部活、ボランティアなど「人との関わりを通して自分の生き方を考えたり、勉強も、受験のための学力だけでなく、自分の興味や発想を開く学習に目を向けたりできれば良かった」と話してくれました。
 勉強を頑張ることは素晴らしいことです。しかし、成績によって自分を卑下したり人をさげすんだり、成績の良い悪いが人としての価値であるかのように考えてしまうところに問題があります。
 子どもたちを苦しめるそのような考え方を、子どもたちに持たせてしまうのは大人の責任です。子どもたちに学ぶ喜びと社会生活を営むのに必要な力を教え伝えるのも大人の責任です。カウンセリングに来る子どもを目の前にすると、私自身、大人としての責任を強く感じて「ごめんなさい」と心の中で言いながら話を聴かせてもらっています。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

いい茶0

教育・子育ての記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞