テーマ : 教育・子育て

生き方は千人千通り(蔭山昌弘/スクールカウンセラー)【思春期の心 支える力 受験④】

 一流企業と言われる会社で頑張って働いていた教え子が、うつ病と診断されました。妻子のある40代です。「ある日突然会社に行けなくなってしまい、医者に診てもらったのですが、うつ病と言われ入院しました。自分は高校も大学も会社も一流と言われるところに頑張って入ったのですが、会社の中での出世争いに心が折れてしまったみたいです。今は、家族と一緒に心の休まる毎日を送りたいと思うようになりました」と退院後に話してくれました。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 一流大学、一流企業に進むことによって「幸せ」が得られると考える風潮はまだ強く残っています。だから親はわが子を小学生の時から学習塾に通わせ、少しでも偏差値の高い学校に行かせたいと思うのでしょう。一流大学、一流企業を目指すのも一つの生き方であって、その過程での努力は素晴らしいものです。しかしそうできなければ自分の人生が終わりだというわけではありません。
 勉強でつまずいたことをきっかけにして学校へ行けなくなった生徒が「勉強で後れてしまった自分の人生はもう駄目だ」とよく口にします。「千人いたら千通りの人生があり、千通りの幸せがある。自分はどういう人生を選んでいくのがいいのか、それを考えるのが今なのかも知れないね」と話して、一緒に考え合っていきます。
 時間はかかっても、自分の興味ややってみたいことが見えてくると、自分の意志で動き出そうとします。結果的に学校に戻る人もいますが、学校から離れる人もいます。どちらにしても、自分の考えと意志で行動を起こすことに意味があります。その時必要になるのが、広い視野で社会の姿を捉え、人生の主人公は自分自身だから、自分には「自分の幸せ」があり、その実現のための「自分の道」があることに気づくことです。カウンセラーとしてサポートするのもその点です。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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