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テーマ : お酒・ビール

「発酵」架け橋に静岡の魅力創出 ビール「家康公クラフト」開発 静大の文理融合研究や産学官連携から

 静岡大の研究組織「発酵とサステナブルな地域社会研究所」(所長・大原志麻人文社会科学部教授)が文理融合の研究と産学官での連携で静岡の新たな魅力づくりに挑んでいる。徳川家康にちなんだ静岡市産クラフトビール「家康公クラフト」の開発など、組織発足から約2年で続々と地域ブランドの醸成に着手。「発酵」を架け橋として地域の活性化を目指す。

学部横断的な研究と産学官連携で発酵飲料づくりなどに取り組む「発酵とサステナブルな地域社会研究所」。県内の植物から取り出した野生酵母のサンプル数は約3000種に及ぶ=2023年12月下旬、静岡市駿河区の静岡大静岡キャンパス内
学部横断的な研究と産学官連携で発酵飲料づくりなどに取り組む「発酵とサステナブルな地域社会研究所」。県内の植物から取り出した野生酵母のサンプル数は約3000種に及ぶ=2023年12月下旬、静岡市駿河区の静岡大静岡キャンパス内


 市内3醸造所が製造した家康公クラフトのうち「ゴールデンエール」は、醸造に家康ゆかりの井川大日峠のツツジから得た酵母を用いたのが特徴。透き通った黄金色と軽やかな飲み口のビールで、酵母由来の花の甘い香りが広がる。ゴールデンエールを手がけた醸造所「アオイ・ブリューイング」(静岡市葵区)の福島英紀代表は「大学との連携によって実現した味わい。ビールには、地域の文化や個性を味覚で楽しめる魅力もある」と声を弾ませた。
 家康公クラフトは同研究所メンバーで同大理学部の丑丸敬史教授らが市内の家康公ゆかりの地に生える植物から酵母のみを分離させ、沼津市の県工業技術研究所沼津工業技術支援センターと共同でビール醸造に適する酵母を約2000種の中から選定。人文社会科学部の横浜竜也教授らがクラフトビールツーリズムなどを研究し同市や静岡商工会議所、市内の醸造所の協力も得てビールを完成させた。同商品は第3弾まですぐに完売し、反響を生んだ。
 産学官の連携や文理融合の背景について、大原代表は「研究成果や社会的価値が『飲めば分かる』ため、誰でも気軽に評価できることが鍵となった。総合大学ゆえ多くの学問領域の知を結集できるほか、ビールへの思いが人との縁を結んでくれる」と話した。
 同研究所は今後、今年で南アルプスユネスコエコパーク登録10周年を迎える同区井川の酵母を用いたウイスキーづくりのほか、明治期にビールの原料として使用されたカラハナソウの県内栽培など、新たな地域ブランドづくりも視野に入れる。
 (社会部・鈴木紫陽)

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