地酒取材の35年、一冊に ライター鈴木さん「静岡県内産」伝統や地域性つづる
しずおか地酒研究会を主宰する静岡市葵区のフリーライター鈴木真弓さん(60)が、本県の地酒を取材して35年の節目に、過去に書いた記事などを再構成した書籍「杯は眠らない」を出版した。クラフトビールの台頭など酒の楽しみ方が多様化する中で「伝統と文化と地域性に彩られた地酒の物語を、改めて知ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。
鈴木さんは20代半ばで初めて県中部にある日本酒の酒蔵を取材。素材や機械任せではなく、職人が微生物をコントロールしながら発酵・熟成させる工程に魅了された。ライター業の傍ら、新聞や書籍などでその魅力を伝える活動をライフワークとして継続。2009年には業界に新風を吹き込んだ「静岡酵母」と各蔵の吟醸酒造りに密着したドキュメンタリー映画「吟醸王国静岡」を制作した。
本書では酒造りに情熱を傾けた杜氏(とうじ)や蔵人の生きざまや苦労話、「1980年代まで酒どころとしては無名だった」本県を「吟醸王国」と言われるレベルまで引き上げた「静岡酵母」と、開発者河村伝兵衛さんの講話などを紹介。「世界的ワイン産地に劣らない名醸地との声が上がる」と語る志太地域の酒造りの歴史も記した。
県内で消費される日本酒の8割は県外産という。鈴木さんは「本を読んだ人に県産の地酒を飲みたい、造り手になりたいと思ってもらえたら」と語った。
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「杯は眠らない」は209ページ、2千円。取り扱いは長倉書店(伊豆市、清水町)、ひばりブックス(静岡市葵区)、高久書店(掛川市)。問い合わせは鈴木さん<mayusuzu1011@gmail.com>へ。