あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : お酒・ビール

弥彦ブリューイング(新潟県弥彦村)地域貢献へ酒販店奮闘 食用菊など農産物活用【クラフトビール群雄割拠 静岡/山梨/長野/新潟⑫完】

 静岡、山梨、長野、新潟4県の県紙が1年にわたり、リレー形式で地元のクラフトビールを紹介してきた、この連載。最終回は、越後一宮として知られる弥彦神社(新潟県弥彦村)の近くにある「弥彦ブリューイング」。地元の酒販店が奮起して村の農産物を積極的に活用し、地域への貢献を目指している。

ビールの仕込みに向けて準備する羽生久美子さん=新潟県弥彦村弥彦
ビールの仕込みに向けて準備する羽生久美子さん=新潟県弥彦村弥彦
新潟県弥彦村 弥彦ブリューイング
新潟県弥彦村 弥彦ブリューイング
地元住民や旅行客が集うタップルーム
地元住民や旅行客が集うタップルーム
ビールの仕込みに向けて準備する羽生久美子さん=新潟県弥彦村弥彦
新潟県弥彦村 弥彦ブリューイング
地元住民や旅行客が集うタップルーム


 こぢんまりとした醸造所には、金物で知られる近隣の燕市で生産されたずんどう鍋や、発酵に使うための冷蔵庫が所狭しと並ぶ。7月、醸造責任者の羽生久美子さん(53)が、キュウリを副原料に使った発泡酒の仕込み作業に汗を流していた。
 運営するのは酒類小売りの「弥生商店」。酒屋の旧店舗を改装し、元号が令和に変わった2019年5月1日、村で初めてのクラフトビール醸造所としてオープン、10席ほどのタップルーム(ビアバー)も設けた。
 地元の農産物を副原料にした個性ある味わいのローカルビールを目指し、村のブランド米「伊彌彦米[いやひこまい]」をはじめ食用菊、枝豆、ブドウ、フキノトウなどさまざまな素材を使用。25種類以上の商品を手がけてきた。
 酒を売るだけではなく、自分たちでも造りたい-。そのきっかけは、久美子さんの弟で、弥生商店3代目社長の雅克さん(46)が冷蔵庫で発酵させるビール造りに出合ったことだ。東京農大卒業後、山梨のワイナリーで修業した経験を持つ雅克さんは、酒造りには多額の設備投資が必要だと考えていた。「それだけに、冷蔵庫でおいしいビールが造れるなんて衝撃だった」
 雅克さんが、長年店頭で酒を販売してきた久美子さんに思いを打ち明けると、「造りたい」と賛同した。久美子さんは半年ほど県内外の醸造所で研修を積み、知識と技術を身につけた。
 実はビールが苦手だったという久美子さん。自分のような人でもおいしく飲めるように、苦みが控えめで、フルーティーな味わいを目指した。「お客さんに『初めてビールをおいしいと思った』と言ってもらえた時はうれしかった」と振り返る。
 看板商品「伊彌彦エール」は、国内クラフトビール審査会「ジャパン・グレートビア・アワーズ」で20年以降、銀賞や銅賞を毎年獲得。国内外のビールが審査対象の「インターナショナル・ビアカップ」でも20年に銅賞を受け、実力を示した。
 創業の翌年、新型コロナウイルス禍に見舞われた。村から観光客らのにぎわいが消え、商品が売れなくなるという経験をした。だが、地元住民やファンらに支えられ困難を乗り越えてきた。
 今年は新たな歴史を刻む。隣接地に、サーマルタンクなどを備えた新醸造所が完成。缶ビールを製造し、年内の発売を目指す。雅克さんは「さらにおいしく、楽しいローカルビール造りに挑戦する」と意気込む。(新潟日報社)

フレッシュな飲み口が人気 「伊彌彦エール」
 弥彦村産の特別栽培米コシヒカリ「伊彌彦米」を副原料に使用した、フルーティーな香りと、フレッシュな飲み口の発泡酒。1番人気の看板エールで「ビールが苦手な人にもお薦め」と醸造責任者の羽生久美子さん。
 村の伝説にちなみ、ラベルにはウサギのキャラクターがあしらわれている。デザインを担当したのは、発売当時は高校生だった羽生さんのおいっ子。商品によって絵柄が異なり、かわいらしく、こちらも人気だ。
   ◇
 弥彦ブリューイング 2019年オープン。新潟県弥彦村弥彦934。タップルームの営業は木曜から日曜の午前11時~午後7時。ビールはインターネット通販も行っている。問い合わせは酒屋やよい<電0256(94)5841>へ。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

お酒・ビールの記事一覧

他の追っかけを読む