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社説(1月28日)地震と原発 非常時対応に万全期せ

 能登半島地震で最大震度7を観測した石川県志賀町内にある北陸電力志賀原発(停止中)に大きな被害はなかったが、一部の設備が故障するなどのトラブルがあった。能登半島では地震で道路が寸断されて通信も途絶した場所もあった。このような地域で複合災害が起きた場合の住民保護に課題を残したといえる。
 志賀原発は沸騰水型原子炉(BWR)を2基備える。観測された揺れは1号機地下で震度5強だったが、一部の周期で加速度が設計時の想定を上回ったという。原発の安全性に影響はなかったとされるが、「想定外」の事象はなくしておくべきだ。
 地震の震源域は長さ150キロを超え、複数の断層が連動したとみられる。政府の地震調査研究本部が進める活断層の長期評価はまだ行われてなく、石川県の地震防災対策も更新途上だったとされる。
 原発には常に地震リスクがつきまとう。しかも原発に影響を及ぼすと予想される断層の確定も容易ではない。得られた知見や明らかになった課題を生かし、謙虚に備えを重ねることで非常時の対応を万全にする必要がある。
 地震では1、2号機の変圧器が破損し、外部電源の一部が使えなくなった。全電源喪失で過酷事故に至った東京電力福島第1原発を教訓に、原発では電源の多様化が図られた。そのため外部電源5回線のうち3回線が使用でき、原子炉冷却維持に支障はなかった。しかし、変圧器は耐震対策が十分でなかったという。
 壊れた変圧器からは放射性物質を含まない絶縁油が漏れた。北陸電は当初、2号機から約3500リットルが漏れたと説明したが、後に約1万9800リットルと訂正した。地震直後の被害把握は厳しい作業となるが、災害対応には正確な情報収集は不可欠だ。
 被災地の能登半島は山間地が多く、救援ルートが確保できなくて物資輸送が円滑に進まなかった。厳冬期は積雪も大きな障害だ。交通網が脆弱[ぜいじゃく]で集落の孤立も目立った。避難路の多重化は不可欠だ。
 原発事故が起きた時にはまず屋内退避することになる。とはいえ、能登半島のように住宅耐震化率が全国平均より低い地域では地震による建物倒壊の多発も想定され、逃げ場が限られる恐れがある。過疎地域への原発立地は複合災害時に悪条件が重なりやすいことを認識する必要がある。
 地震によって、志賀原発周辺に自治体が設置した、敷地外への放射性物質の漏洩[ろうえい]を監視する装置(モニタリングポスト)116台のうち、原発北側にある18台が一時的に欠測した。通信に問題があったという。避難などにも関わる災害情報の収集は適時・確実に行われなければならない。

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