テーマ : 気象・災害

【科学する人】山梨県富士山科学研究所長 藤井敏嗣さん㊦火山専門 家育成に注力

 「ここ100年ほど、日本社会は国土の広範囲に被害が及ぶような大規模な噴火を経験していない。対策を怠れば必ずしっぺ返しを食らう」。藤井敏嗣さんは危機感をあらわにする。

火山調査研究推進本部の設置に向けた準備会に参加する藤井敏嗣さん(中央奥)=東京都千代田区
火山調査研究推進本部の設置に向けた準備会に参加する藤井敏嗣さん(中央奥)=東京都千代田区

 2014年9月、長野・岐阜両県にまたがる御嶽山(3067メートル)で、マグマの熱で水が熱せられて爆発する「水蒸気噴火」が発生。登山客ら58人が死亡し、5人が行方不明となった。当時、火山噴火予知連絡会の会長だった藤井さんは「水蒸気噴火を予測する難しさを感じた」と振り返る。
 活火山の観測や研究をどう進めていけばよいのか。これまでは気象庁や大学がそれぞれ独自に取り組み、連携不足が指摘されてきた。国立大学の法人化に伴う予算削減などが響き、専門家も不足している。
 このため23年6月、噴火対策の強化を目的とした改正活動火山対策特別措置法が成立。観測や調査研究を一元的に担う政府の「火山調査研究推進本部(火山本部)」が24年度に新設されることが決まった。
 火山本部設置に向けた専門家らによる準備会で藤井さんは副座長を務める。「一歩前進だが、自治体や気象庁で専門家の活躍の場を増やさなければ人材は集まらない」と訴える。「育成に時間をかければ成果も上がる。そのために努力するのが火山本部だ」。藤井さんの活動は続く。

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