テーマ : 気象・災害

輪島など6市町 能登 下水管の52% 被害 耐震化 全国で対策に遅れ 過去の大地震と比べ突出

 能登半島地震により、石川県輪島市など6市町の下水管延長計685キロのうち、52%に当たる359キロで汚水を流す機能を失ったことが26日、分かった。最も深刻な珠洲市は94%に上った。最大震度7の強い揺れに地盤の液状化が重なり寸断されたとみられ、被災割合は過去の大地震と比べても突出して高い。被害規模が拡大したことで復旧が遅れ、住民生活への影響が長引いている。

石川県珠洲市の地上に浮き上がったマンホール=23日
石川県珠洲市の地上に浮き上がったマンホール=23日
過去の大地震での主な下水管被害
過去の大地震での主な下水管被害
宿泊拠点に入るボランティア参加者=26日午後、石川県穴水町
宿泊拠点に入るボランティア参加者=26日午後、石川県穴水町
石川県珠洲市の地上に浮き上がったマンホール=23日
過去の大地震での主な下水管被害
宿泊拠点に入るボランティア参加者=26日午後、石川県穴水町

 地震に伴う下水管の被害を抑えるためには耐震化が有効とされる。しかし国土交通省によると、全国の主な下水管8万6千キロのうち2022年度末時点で耐震化が済んだのは56%にとどまり、対策は遅れている。
 石川県によると、能登半島地震では県内17市町で総延長の27%が汚水を流す機能を喪失したり、マンホールが地上に浮き上がったりした。液状化しやすいエリアを中心に地下に埋設した管が強く揺さぶられ、広い範囲で損傷を受けたようだ。県は、被害が大きかった原因は「把握できていない」と説明している。
 国交省によると、過去の地震で下水管が損傷した割合は16年の熊本地震が3%。震度7を2回観測した熊本県益城町では170キロの13%に当たる22キロが被災した。04年の新潟県中越地震は旧川口町(現長岡市)の22%が最大。11年の東日本大震災は被害が広範囲に及んだものの、管の損傷は総延長の1%程度だった。
 石川県は応急処置として被害箇所に仮設管を敷くなどしており、3月末までに下水道機能を回復したい考え。ただ本格復旧は、管が埋まる道路と一体的に工事をする必要があり、さらに時間がかかる見通しだ。
 近畿大経営学部の浦上拓也教授(公益事業論)は「下水道の耐震化は、地盤強化などに膨大な費用がかかる。対策が後手に回る自治体は多い」と指摘。被災後に機能を迅速に回復させるため、平時から自治体間で人員の応援など広域連携の体制を整えておく必要があると強調した。
住宅被害7万7000棟超 石川県 断水2万戸で続く  石川県は26日、能登半島地震による住宅被害が7万7804棟になったと発表した。内訳は七尾市1万4889棟、珠洲市1万4029棟、輪島市1万1774棟など。断水は約2万230戸で続いており、浄水施設や水道管の復旧を急いでいる。
 死者は災害関連死15人を含む計241人、安否不明者は輪島市の9人、負傷者は1186人で、それぞれ変動はない。
ボランティア拠点 運用開始 石川県が穴水町に開設  石川県は26日、能登半島地震の一般ボランティア用に設置した宿泊拠点の運用を始めた。半島北部の穴水町にある廃校になった中学校の校舎を活用。ホテルの多い金沢市から日帰りで往復するのに比べて被災地での活動時間を確保できるため、参加者は歓迎する。一方で安全確認に時間がかかるといった事情から、活動領域は思うように広がっていない。
 穴水町比良の拠点には定員1~2人のテント95張りを用意。参加者は寝袋を持参し、2食分の食事代千円を払う。東京都大田区の会社員尾崎啓郎さん(52)は「雑魚寝だと思っていた。想像より居心地が良さそう」と満足げだった。
 県は一般ボランティアへの応募殺到を防ぐため、1月6日から受け付けを一元管理。2月22日時点で延べ3891人が活動するものの、作業時間確保が課題だった。県によると、輪島市など半島北部の4市町にアクセスしやすく、最も遠い珠洲市まででも移動は1時間半程度。担当者は「倍ほどの作業が可能になる」と期待する。
 一方で活動人数増につながるかどうかは不透明だ。県は派遣規模について市町の要請に従う方針で、輪島市は住民の流出や日程調整の煩雑さに加え、現地の安全を確認する事前調査に手間取り、思うように募集を増やせていない。市社会福祉協議会の荒木正稔介護福祉課長は「道路状況が改善すれば一気に活動が広がると思っていた」と唇をかむ。
 当初1週間の拠点利用は珠洲市と穴水町の参加者に限られ、26日は42人だった。県幹部は「走りながら改善していく」と語った。

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