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社説(2月1日)能登地震1カ月 「日常」の回復を早期に

 最大震度7を観測した能登半島地震から1日で1カ月。被害が大きかった石川県では死者が238人、安否不明者も19人を数える。停電はおおむね解消したが、4万戸以上で断水が続き、1万4千人以上が避難生活を続ける。
 山地が多い半島地形で道路事情がよくないところに、土砂崩れや地盤の隆起・陥没が交通網を寸断した。海岸の隆起や津波によって海上輸送も困難になった。水道や電気、通信が断たれ、テレビも停波した。被害情報の収集が一向に進まず、外部からの救命救助も困難を極めたことは、同様な地形が多い全国にも共通する課題だといえる。
 依然として被害の全容が把握できていない。ただ、被災地では仮設住宅の建設が始まった。ライフラインの復旧も進む。まずは生活基盤を安定させ、「日常」を早期に取り戻していくことが重要だ。政府・自治体にはできる限りの支援を求めたい。

 関係者の懸命な努力にもかかわらず、断水の復旧には月単位の時間がかかりそうだ。被災状況によっては避難生活の長期化は避けられそうもない。避難所には行かず、車中泊生活や在宅生活を続ける被災者には行政支援の手が届きにくい。厳冬期を迎えた中、災害関連死を防ぐ支援の取り組みに注力してほしい。
 石川県のまとめで、地元小学校の体育館や公民館など1次避難所への避難者は、発生直後の3万人台から8千人台にまで減少した。被災地を離れた、生活環境が整った旅館やホテルなど2次避難所には4千人余りが身を寄せる。
 しかし、2次避難所への移動は思うように進んでいないようだ。故郷を離れることへの葛藤や不安、空き巣狙いなど防犯上の懸念、仕事や親族の介護など、理由はさまざまだろう。行政は個人の事情に寄り添いながら、健康の維持を優先して誘導してほしい。いつまでに戻れるという見通しを明確にする必要もある。
 2次避難所に関しては、受け入れ先がすんなり決まらない、食事の提供が不十分、などの問題があるという報道もある。ノウハウも人手も足りない応急対応なので仕方ない面もあるが、民間の力を活用して改善を図りたい。
 避難先が体育館だと集団生活でプライバシーが保てず、夏の暑さと冬の寒さは高齢者や幼児には負担が大きい。土足で出入りすれば不衛生で感染症も広がりやすい。旅館・ホテルを利用した2次避難所の役割は、今後の災害でも重要性が増すのではないか。ふだんからの連携とともに利用誘導も含めた円滑な運用方法の研究と準備が必要だ。

 住宅耐震化が遅れた地域を激震が襲い、多くの木造住宅が倒壊した。下敷きにならずとも家具などの転倒や落下で負傷した人も少なくないだろう。改めて住宅の耐震化や家具の転倒防止の必要性を強調しておきたい。犠牲者の多くは住宅倒壊とみられるが、下敷きによる圧迫や窒息だけでなく、低体温症など寒さで命を失った可能性もある。
 耐震補強に伴う経済負担を考えると高齢者世帯が尻込みするのはもっともだ。一部の補助と呼びかけだけでは徹底には限界がある。どうすれば自宅の倒壊で失われる命を減らせるのか。補助の拡充などの議論を深める必要がある。補強工事より経済負担が軽い「耐震シェルター」や「防災ベッド」も推進したい。
 被害が集中した能登半島北部の奥能登2市2町の人口は約5万8千人、高齢化率は48・9%(2020年)。石川県内で最も過疎化と高齢化が進む地域で、50年時の人口は半減するという推計もある。
 地域産業に大きな打撃を与えた震災は人口減少を加速する恐れがある。東日本大震災でも指摘された問題だ。今はまだ安否不明者の捜索や応急復旧、生活再建に力を入れる時期かもしれない。しかし、地域の将来像を踏まえた復興プランは早めに描いておくことは極めて重要だといえる。

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