テーマ : 気象・災害

行方不明の被災猫捜索 能登半島 “ペット探偵”が活動 「発災時 まず飼い主が冷静に」(片野ゆか/ノンフィクション作家)

 甚大な被害が出た能登半島地震。被災者の中に、飼っていたペットが行方不明になったケースが少なくない。

再会を果たした飼い主と愛猫=能登半島北部(ペットレスキュー提供)
再会を果たした飼い主と愛猫=能登半島北部(ペットレスキュー提供)
藤原さんの捜索活動で無事に保護された猫たち=同
藤原さんの捜索活動で無事に保護された猫たち=同
藤原博史さん。25年で約6000件のペットの捜索を行ってきた
藤原博史さん。25年で約6000件のペットの捜索を行ってきた
再会を果たした飼い主と愛猫=能登半島北部(ペットレスキュー提供)
藤原さんの捜索活動で無事に保護された猫たち=同
藤原博史さん。25年で約6000件のペットの捜索を行ってきた

 ペットレスキュー(神奈川県藤沢市)代表で、“ペット探偵”の藤原博史さんが飼い主の要請を受け、ボランティアとして現地入りしたのは1月中旬のこと。「相談の多くは猫に関することでした。地震が発生した時、犬は飼い主と同じ行動を取ろうとするのでリードを付けて同行避難しやすい。しかし、猫はベッドやソファなど低い場所に逃げ込んだまま行方が分からなくなることが多いのです」
 インターネットで相談があった猫の飼い主の多くは、被害の激しい能登半島北部に住んでいた。二次避難で多くの人が地元を離れる中、愛猫を残して避難できず困っていたという。藤原さんは「これは人とペットの命に関わる緊急事態」と判断。この地域ではボランティアの受け入れをしていなかったが、飼い主が自治体にペット捜索の許可申請を出し捜索できることになった。
 探し始めたのは地震発生から約2週間後で、寒さも厳しかった。「猫は安全な場所に身を潜めることで体力を温存できるので、1カ月くらいは持ちこたえられます。災害時は自宅付近から遠くへ移動しない傾向があり、半壊住宅には隠れる場所も多く、保護できる可能性が高いと感じました」
 捜索の際は複数の機器を使用するが、今回特に活躍したのはセンサーが動きを感知して夜間も録画できるトレイルカメラ。「災害時は近隣から目撃情報が得にくいため、餌とカメラを設置して猫の生存確認と居場所の特定に使いました。隠れ場所が分かったら、移動経路を見極めて捕獲器を仕掛けます」
 1週間の活動期間中は悪天候が続いたこともあり、猫の姿は確認できなかった。しかし、飼い主が藤原さんのアドバイスに従い探し続けた結果、生存を確認した11匹のうち9匹を無事に保護できたという。
 一方、火災に巻き込まれたペットは悲しい結果となった。「火災では一酸化炭素中毒で意識がなくなり、死ぬケースがほとんど。とても残念ですが、飼い主さんには『ペットは苦しまなかったですよ』とお伝えしました」
 自然災害が非常に多い日本では、誰でも被災してペットと離れ離れになるリスクがある。災害発生時は「まず飼い主さんが身の安全を確保して、冷静になることが重要」と藤原さん。特にペットの名前を大声で連呼するのは、怖がるので絶対に駄目とくぎを刺す。「猫は激しい揺れが少し収まると低い場所から出て、1メートルほど高い所で状況確認をする習性があります。その時に、飼い主さんが落ち着いた口調で呼び掛ければ安心してくれるはずです」
 緊急時にペットを守る方法の一つとして、ぜひ覚えておきたい。
 (片野ゆか・ノンフィクション作家)

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