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輪島、ボランティア始動も… 進まぬ受け入れ 宿、交通事情が壁 能登地震

 能登半島地震の被災地・石川県輪島市で10日、県が一般から募集したボランティア約40人の作業が始まった。半島北部の奥能登地域で活動が本格化したが、県によると、事前登録の約2万3千人に対し、実際に活動するのは1日当たり約250人。現地宿泊が困難で道路も十分復旧しておらず、活動は広がらない。専門家は「寄り添った支援にはもっと多くの人員が必要。受け入れ先を増やすべきだ」と指摘する。

被災した家屋から運び出した災害ごみを分別するボランティア=10日午後、石川県輪島市
被災した家屋から運び出した災害ごみを分別するボランティア=10日午後、石川県輪島市


 輪島市の住宅や宿泊施設では、災害ごみの片付けなどが行われた。自宅の棚や冷蔵庫を運び出してもらった男性(60)は「自分で動かせない大きなものを運んでもらって助かった」と話した。
 10日時点で全国から受け入れているのは奥能登地域4市町を含む計8市町。登録開始は1月6日だったが、活動は1月27日から順次始まった。炊き出しなどを行う専門的なボランティア団体は発生直後から現地入りしたものの、一般は受け入れ準備に時間がかかった。
 断水が多い同地域は宿泊が難しく、県は一般ボランティアの拠点を金沢市とし、バスで日帰りする方式とした。通れる道路が限られ、マイカー利用による渋滞を防ぐ必要もある。日帰りのため、実働は4時間程度となっている。
 県の担当者は「市町から要請があった分だけ派遣している。それ以上送っても現地が抱えきれず困ってしまう」と話す。混乱を避けるため、個人単位の活動は控えるよう求めている。
 作業は住宅の片付けが多く、立ち会う被災者の都合も考慮し、輪島市は土日祝日を中心とした。市の担当者は開始時期について「被災者の状況が落ち着かず、自宅に戻れない人がいる中、優先順位を付けた」と語る。
 災害ボランティアに詳しい大阪大大学院の宮本匠准教授によると、一般ボランティアを限定すると、支援する側の意欲が低下するだけでなく、人が入らない地域の被災者が忘れられたと感じてしまう恐れがあるという。

初日は40人 参加側にもどかしさ
 石川県に登録した災害ボランティアの活動が10日、輪島市で始まり、冷たい風が吹き付ける中、参加者は土ぼこりを被りながら手際よくがれきを片付けた。「きれいにしてもらい、気持ちがすっきりした」。住民から歓迎の声が上がる一方、活動できる人数は限られ、受け入れが進まないもどかしさも漂う。
 参加者を乗せ金沢市を出発したバスは途中渋滞で遅れ、午前11時前に輪島市に到着。受付会場で説明を受け、10人前後のグループごとに作業現場に分かれた。
 同市河井町の民宿では、雨漏りで使えなくなった畳の運び出しやごみの分別が進み、店主の田中孝一さん(60)は「一人ではできなかったので助かる」と目を細めた。損壊した自宅で避難を続ける伊吹真緒さん(28)は「人手はいくらあっても足りないので引き続き支援をお願いしたい」と語った。
 過去に災害ボランティアを経験した参加者からは注文も相次いだ。横浜市のITエンジニア村上正明さん(55)は「受け入れ側のキャパシティーが少ない」と指摘。東京都墨田区のプロレスラー長谷川一孝さん(47)は「(受け入れ)初日が40人ほどとは聞いたことがない。これでは復興まで時間がかかる」と苦言を呈した。
 3日に活動が始まった同県珠洲市ではいまだ手つかずのがれきが目につく。小学校に避難する向正義さん(56)は「日帰りのボランティアではなかなか難しいのではないか」とつぶやいた。

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