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社説(1月3日)能登半島地震 被害把握し迅速救助を

 新年が明けた1日午後4時10分ごろ、能登半島でマグニチュード(M)7・6の地震が発生し、石川県志賀町で最大震度7を観測した。気象庁は一時、同県能登に大津波警報を、北海道から九州まで日本海の広い範囲に警報や注意報を発表して津波への警戒を呼びかけた。
 震度6強を観測した石川県輪島市などでは建物の倒壊が相次ぎ、大規模火災も発生した。県は2日午後3時半現在で48人の死亡を確認したと発表した。負傷者も広域にわたって多数に上るようだ。時間の経過に伴って徐々に被害が判明している。まずは被害状況の全容把握が必要だ。要員を投入して情報収集に全力を挙げなくてはならない。
 合わせて人命最優先に救出と救助を急いでもらいたい。電気や水道、携帯電話などのライフラインや物流の早期復旧も求められ、全国規模の支援が欠かせない。
 能登半島周辺では2007年3月に最大震度6強の地震が発生した。23年5月にも最大震度6強の地震が起き、ここ3年ほど地震活動が活発化していた。気象庁は今回の一連の地震活動を「令和6年能登半島地震」と命名した。
 気象庁は今後1週間、特に2~3日は最大震度7程度の地震が起こる恐れがあるとして警戒を呼びかけている。地震活動は当面続くと考えられるという。熊本地震(16年4月)では最大震度7を観測する地震が28時間ほど空けて2度発生した。震度7の観測は北海道胆振[いぶり]東部地震(18年9月)以来となる。
 今回の地震はごく浅い場所で発生。逆断層型だったため海底を押し上げて津波が起きたとみられる。大津波警報は津波の高さが3メートルを超えると予測される場合に発表され、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震(11年3月)以来という。
 2日午前10時で津波注意報はすべて解除されたが、輪島港で地震発生直後に1・2メートル以上が観測され、日本海沿岸各地でも到達が確認された。珠洲[すず]市の飯田港では多数の漁船が転覆する被害があったというが、人や家屋の流失に関する被害は不明だ。確認を急いでほしい。
 津波への対応は、南海トラフ地震が想定される静岡県でも切実な問題だ。夜間に起きた場合も含めて避難や誘導、避難する場所やルートの確認などが求められる。津波浸水想定地域では、大地震が起きたらまず避難を原則に、いざという時に備えた心構えをしておくことが大事だ。
 能登半島地震による強震動で、倒壊したり屋根瓦や壁が落下したりと、木造住宅に大きな被害が出ている。生き埋めや閉じ込めも複数箇所で起きているようだ。改めて耐震基準に満たない住宅の建て替えや耐震補強、家具の転倒防止が求められる。
 住宅倒壊によって多くの圧死者を出した阪神大震災から17日で29年となる。阪神などを契機に住宅の耐震性能は向上してきたが、既存住宅の中には必要な耐震性能を欠く家もいまだに少なくない。耐震化率の向上へ呼びかけや働きかけを強化していきたい。地震で消防力が低下した中で起きる大規模火災についても厳重に注意する必要がある。
 被災地では隆起や陥没などで各地の道路が寸断されているという。2日に会見した岸田文雄首相は、陸海空を通じた要員の派遣や輸送ルートの確保に加え、被災地からの要請を受ける前に必要物資を送り届ける「プッシュ型支援」を指示したと明らかにした。食料や水、生活物資などが一刻も早く被災者の元に届くよう取り組んでほしい。
 4日にかけて被災地の天候は悪化が予想されている。厳冬期に避難した住民の健康を考えると、可能な限り手厚い救援を望みたい。能登地域の高齢化率(22年)は高く、珠洲市で52・8%、輪島市で47・9%など。人口の多数を占める高齢者の視点に立った支援が欠かせない。

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