テーマ : 気象・災害

3人に1人滞納 制度限界 災害援護資金 回収業務 自治体負担に【東日本大震災13年】

 11日で発生から13年となった東日本大震災で、災害援護資金を借りた岩手、宮城、福島3県の被災者のおよそ3人に1人、約9千人が返済を滞納していた。回収業務を担う市町村にとっても大きな負担となる。同制度を巡っては阪神大震災の際にも滞納が相次ぎ、最終的に自治体が返済を免除した例がある。能登半島地震でも同様の問題が起きかねず、専門家は貸付制度は限界として、給付の拡大を求めている。

災害援護資金貸付制度に関する岩手県陸前高田市と仙台市の資料
災害援護資金貸付制度に関する岩手県陸前高田市と仙台市の資料
岩手、宮城、福島の災害援護資金の返済状況
岩手、宮城、福島の災害援護資金の返済状況
災害援護資金の仕組み
災害援護資金の仕組み
災害援護資金貸付制度に関する岩手県陸前高田市と仙台市の資料
岩手、宮城、福島の災害援護資金の返済状況
災害援護資金の仕組み


 苦しい生活
 「借りなければよかったとすら思う」。宮城県内に住む自営業の女性(73)はため息をつく。震災で自宅や経営していたガソリンスタンドを失った。生活費などとして災害援護資金350万円を借り、半年ごとに25万円を返済する。収入は十分ではなく生活は苦しい。
 3県の79自治体を対象にした共同通信の調査では、滞納者がいると答えたのは64自治体に上る。うち33自治体は回収困難となる金額まで予測、既に提訴した7自治体のほかにも15自治体が返済を求める訴訟を検討中だ。
 宮城県松島町の担当者は「元々低所得の人が対象なので親族の援助や震災前以上の新たな収入がない限り、返済できる見込みは少ない」と話す。
 仙台市は被災地で最大となる約233億円を約1万5千人に貸し出した。滞納者は約4600人。額は約26億円と見過ごせない状況だ。文書や電話で督促し家計状況に合わせ少額返済や一時的な猶予も勧めている。しかし返事がなかったり電話に出なかったりするケースも多い。

 提訴211件
 仙台市は計211件の訴訟を起こしている。仙台地裁は昨年7月、150万円を借りた男性に対し市に支払いを命じる判決を出した。男性は再三の督促にも返事がなく法廷に姿を見せなかった。
 市担当者は「被災者を支援するのは当然だが、原資は税金であり着実に返済してもらう必要がある」と頭を抱える。
 宮城県や仙台市は2021年、資金を拠出した国に対し返済期間の延長を要望。仙台弁護士会も同様の要望をしている。

 肩代わり
 この制度は1995年の阪神大震災でも課題が浮き彫りになった。兵庫県内で5万人超に約1309億円が貸し付けられたが、滞納が相次いだ。20年以上がたっても全額回収が見込めず神戸市などが最終的に返済を免除し肩代わりした。市担当者は「長期にわたる返済は生活再建の妨げになっていたかもしれない」と振り返る。
 今年1月に発生した能登半島地震でも利用申し込みが始まっている。災害法制に詳しい津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)は「返済長期化は復興に負の影響を及ぼしており、給付にするのが望ましい」と指摘する。その上で「貸し付ける場合でも被災者の実情に合わせ返済を免除するなど規定を緩和することが必要だ」と強調した。
 所管する内閣府の担当者は、給付金制度が別にあると説明し、「資金が不足する被災者のためにこの貸付制度がある。給付を拡大するならば給付金制度で対応すべきだ」と話している。

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