テーマ : 気象・災害

決定から半世紀、北陸新幹線延伸に沸く沿線 一方で…旅館の2次避難者「肩身狭い」

 半世紀待ち望んだ新幹線が北陸の地を駆け抜け、新たな歴史を刻んだ。16日に延伸開業し、敦賀駅(福井県敦賀市)と東京駅が直通した北陸新幹線。「万感の思い」「被災地を励ましたい」。沿線は祝賀ムードに包まれ能登半島地震からの復興へ思いを込める乗客もいた。

北陸新幹線の金沢―敦賀間が延伸開業し、JR金沢駅で敦賀行き「つるぎ81号」に乗り込む人たち=16日午前
北陸新幹線の金沢―敦賀間が延伸開業し、JR金沢駅で敦賀行き「つるぎ81号」に乗り込む人たち=16日午前

 午前6時11分、敦賀駅で上島豊敏駅長と俳優でモデルの中条あやみさんが手を上げ「出発進行」と告げると、一番列車の東京行きかがやき502号が警笛を響かせ、走り出した。ホームでは拍手が湧き起こり、大勢が見送った。
 「きれいな新幹線に乗るのが楽しみ」。福井市の会社員今川実さん(48)は、息子の小学5年航佑君(11)と笑顔で一番列車に乗り込んだ。御前崎市の増田聡さん(37)は「能登半島地震の被災地を励ますために観光に来た」と話し、金沢駅に向かった。
 新幹線が停車する石川県小松市の小松駅では、観光関係者らが改札前で乗客を出迎え、地元をPR。宮橋勝栄市長は「万感の思いだ。小松を飛躍させる歴史のスタートにしたい」と強調した。

 旅館の2次避難者「肩身狭い」
 北陸新幹線金沢-敦賀延伸開業で16日、新たに新幹線停車駅となった石川県の加賀温泉駅周辺では、元日の能登半島地震で被災し旅館などに2次避難している人々から「観光客が増えて肩身が狭くなる」と不安をこぼす声が上がった。同駅から100キロ以上離れ、地震で甚大な被害が出た石川県珠洲市や輪島市でも住民らの複雑な思いが交錯した。
 珠洲市から加賀市山中温泉の宿に避難中の女性(69)は「観光客も宿泊しているので、宿からはロビーをあまりウロウロしないでくれと言われた」と打ち明ける。「お金を払っていない自分たちは肩身が狭い。お世話になっているので宿には潤ってほしいが、観光客が増えるともっと居づらくなる」と心境を明かす。
 加賀市片山津温泉に避難する輪島市の井上美栄さん(50)は3月末で退去予定だったが、ホテルの計らいで5月1日まで期間が延長された。「安心して過ごしながら先のことを考えられて本当に助かる」と感謝する。
 ただ、2次避難先の宿から、みなし仮設への転居を考える人も。輪島市から避難してきた60代男性は「はっきり出て行けとは言われていないが、観光客が増える中、自分は居ていいのかという気持ちがある」と引っ越し準備を始めた。
 一方、珠洲市や輪島市では3月16日も住民ががれきなどの片付けを懸命に進め、ボランティアや応援の自治体職員、自衛隊の姿があちこちに見られる被災地の日常が続いた。
 「新幹線なんて興味ないよ」と漏らしたのは珠洲市正院地区の瀬戸静子さん(88)。自宅の基礎には亀裂が入り、再建の見通しはまだない。「今はこれからどう生きていくかだけを考えている」と、地割れが生じた畑を見つめた。市役所に罹災(りさい)証明書の再審査を求めに来た男性(68)も「遠いところの話だ」と突き放した。

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