テーマ : 気象・災害

能登復興の歩み、伝え続ける 季刊情報誌「能登」発行の経塚さん 春号準備中 

 能登半島地震では、地元の食や文化の魅力を発信してきた季刊情報誌「能登」を発行する石川県輪島市の経塚幸夫さん(70)の自宅兼編集室も大きな被害を受けた。金沢市へ避難することになり、完成間近だった冬号は休刊としたが、春号は地震特集号として出すと決めた。「被害を記録し、復興に向けた歩みを伝え続けるのが使命」。半島の各地を訪ねて回り、取材と原稿執筆を進めている。

「能登」のバックナンバーを眺める経塚幸夫さん=1月30日、金沢市
「能登」のバックナンバーを眺める経塚幸夫さん=1月30日、金沢市

 「地産地消文化情報誌(マガジン)」を掲げる「能登」は、地元新聞社を退社後、妻の実家である寺を継ぐため金沢市から輪島市門前町に移住した経塚さんが2010年に創刊した。新聞社時代、地域振興のイベントに携わった経験などから、半島の文化の豊かさにほれ込んだという。「能登には日本の未来を生き抜くヒントがある」と話す。
 すしや日本酒、スイーツといった食の話題に加え、地元の芸術祭や風力発電計画など特集するテーマはさまざまだ。「人の魅力に焦点を当てる」との考えから、店やイベントの紹介にとどまらず、地元の人の個性や思いが伝わる誌面づくりを心がけてきた。
 「すぐネタが尽きるだろう」と言われたこともあったが、大きな写真と洗練されたデザインも受け、地元の人から「掲載されたい」と言われるほどの人気情報誌に。発行は50号を超えた。
 元日の地震で寺や自宅は大きくゆがみ、壁もはがれ、利用できる状態ではなくなった。移住者を特集した冬号は印刷直前だったが「能登の人たちは読んでいる場合ではない」と判断し、休刊にした。
 先のことはしばらく考えられず「このまま廃刊でもいいかな」との考えも頭をよぎった。だが、読者からの「出し続けてほしい」という声にも背中を押され「能登の現状を伝えよう」と春号の刊行を決意した。執筆者らが地震発生時のことをつづる体験記やこれまで取り上げた人たちの近況を盛り込む予定だ。

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