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土砂災害情報を高精度化 避難指示「空振り」改善/知事、インドとの経済的交流を推進/第2子保育料無償 県全体で30億試算/80歳歯20本以上7割 静岡県議会12月定例会

 静岡県議会12月定例会は11日、自民改革会議の伊藤謙一氏(袋井市・森町)、良知淳行氏(焼津市)とふじのくに県民クラブの田中照彦氏(浜松市中区)、良知駿一氏(同市北区)が一般質問を行った。大雨で土砂災害の危険が高まった際に県と気象庁が発表する土砂災害警戒情報について、勝又泰宏交通基盤部長は、従来よりも高精度な情報を発信することが可能になったとし、2024年度から運用する方針を明らかにした。良知駿氏への答弁。

 土砂災害警戒情報は、市町村長が避難指示を発令する際の判断や住民の自主避難を支援するために、都道府県と気象庁が共同で、対象となる市町村を特定して発表している。国は同情報が発表された場合、市町村が避難指示を発令することを基本としている。
 県によると、豪雨災害の頻発化、激甚化に伴い市町が避難指示を発令する回数は増加傾向にあるという。一方で、土砂災害警戒情報や避難指示が出ても実際に被害が出なかった場合、「避難指示の空振り」と捉える住民も少なくない。
 良知駿氏は災害の危険が迫った際に住民の避難行動を促すためには、予測情報の精度を高める必要があると指摘した。これに対し、勝又部長は有識者や静岡地方気象台と検討を重ねた結果、従来5キロ四方で区切っていた土砂災害の予測対象範囲を1キロ四方に細分化したと説明。「これにより『空振り』の改善が見込まれる」として、24年度から運用する方針を示した。
 洪水予報に関しても県内322カ所の観測地点で水位データの蓄積を続けて、河川ごとに水位上昇の特性を分析し、予測の精度向上を図る。勝又部長は「国が進めている水位予測の技術開発を注視し、県管理河川への導入を検討していく」とも述べた。
 (政治部・豊竹喬)

知事、インドとの経済的交流を推進 超党派議連とも連携
 川勝平太知事は人口増を背景に経済成長を続けるインドとの人的・経済的交流を推進すると表明した。県議会で近く設立される超党派の議員連盟とも連携して地域外交に取り組む。良知淳氏への答弁。
 インドは人口14億人超で中国を抜いて世界一になったとされる。県はインドを地域外交基本方針の重点国に位置付け、首都圏のインド系企業に対して県内へのサテライトオフィス誘致を働きかけたり、インド人材と県内企業をつなぐオンライン就職面接会を開催したりしている。
 川勝知事は「今後はインドからの活力の取り込みや本県企業の現地における展開を強化する」と述べ、地方政府や現地大学などと関係構築に取り組むと強調した。
 インドを巡っては県議会最大会派の自民改革会議が9月にインド友好促進議連を立ち上げ、近く超党派の議連が発足する見通し。知事はこうした動きにも触れ、「議連とも連携し、これまで以上にインドとの交流を進めることで、県民にメリットのある地域外交を展開する」と述べた。

第2子保育料無償 県全体で30億試算
 八木敏裕健康福祉部長は、第2子の保育料を県内全市町で全額無償化した場合、年間30億円の経費負担が必要とする試算を明らかにし、「極めて大きな負担」と県単独で無償化することは困難との考えを示した。伊藤氏への答弁。
 国の幼児教育・保育の無償化事業で、現在は3~5歳と、住民税非課税世帯の0~2歳の利用料が無償化されている。3歳未満については、複数の子どもが同時に保育所などに通園する場合、第3子以降は無償となっているが、第1子は全額、第2子は半額の負担が求められる。
 八木部長は、第2子の無償化を導入している県内5市町で若年世代の転入増加傾向は確認できていないものの、子育て世帯の経済的負担軽減につながるとの認識を示した。一方で、県単独での負担軽減策の実施は県負担が大きいため、「国が制度を検討すべき」とした。第1子も含めた完全無償化について、国、県、市町で負担する仕組みの必要性を全国知事会を通じて国に求めるとの考えを述べた。

80歳歯20本以上7割 県民割合改善、啓発に力
 八木敏裕健康福祉部長は、80歳で歯が20本以上ある県民の割合が2022年度に69・8%となり、16年度の60・2%から改善したと明らかにした。田中氏への答弁。
 県は80歳になっても健康な歯を20本以上保ってもらうため、地域で活動するボランティア「8020推進員」や県歯科医師会と協力して啓発事業に取り組んでいる。適切な方法による歯磨きや定期的な歯科受診の呼びかけ、オーラルフレイルの重要性を啓発する冊子の作成などを進めてきた。
 八木部長は事業の効果を示しつつ、20歳以上の県民のオーラルフレイル認知度が24・8%にとどまっていることを課題に挙げ、幅広い世代に周知する必要性を指摘した。「8020推進員の増員やSNSでの動画配信に取り組んでいく」と答えた。

一般質問要旨
自民・伊藤氏
 本県人口は2018年から10万人減少した。出生数を増やす取り組みが喫緊の課題だ。0~2歳の保育料無償化は自治体ごとに異なり、利用者の負担に格差が生じている。無償化による若年世代の転入増加の傾向や、人口偏重の影響を考えれば、本県でも検討が必要だ。費用推計や無償化への県の考えは。

自民・良知淳氏
 日米豪印の協力枠組み「クアッド」が注目を集めている。インドは今後も著しい発展の可能性がある国だ。県はこれまで関係構築を進めてきたが、コロナ禍で交流が滞っている。本県がさらなる発展を遂げるには、巨大な潜在力を持つインドを良きパートナーとしていくことが重要だ。今後の交流をどう進めるか。

ふじ・田中氏
 かんだり飲み込んだりする口腔(こうくう)機能が衰えることを指す「オーラルフレイル」は、早期に把握できる老化の重要なサインと言われる。機能悪化は食生活に支障を及ぼし、心身全体の衰えとの深い関係も指摘されている。県が近年進めているオーラルフレイル予防の取り組みの効果や課題は。

ふじ・良知駿氏
 静岡県内で2人が死亡した6月の豪雨災害は避難指示の影響力の弱さを露呈した。市町が出す避難指示の実効性が高まらない原因の一つに、避難に資する情報の精度が低いことにあると考える。各市町は「空振り」を恐れずに災害対応に当たっているそうだが、住民の避難行動を促す上で情報の精度向上が必須ではないか。

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