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テーマ : 藤枝市

森林のCO2吸収量 売買 J―クレジット 官民推進 普及着々 藤枝で新モデル始動

 適切に管理した森林の二酸化炭素(CO2)吸収量を売買する「J―クレジット制度」の活用が静岡県内で広がり始めた。藤枝市では制度の認証登録で事業者にかかる費用を市が一部補助し、地域でのクレジット流通を地元企業が後押しする新たな仕組みが動き出した。静岡、浜松市でも企業が保有林でクレジット創出に乗り出すなど、環境価値の創出で生み出す資金を循環させて脱炭素社会の実現を推し進めている。

間伐して管理された森林=藤枝市
間伐して管理された森林=藤枝市


 藤枝市で山林を所有する渡辺林業とTMホームが12日、国が認証するJ―クレジット制度の登録を受けた。対象の森林は2社合計で約200ヘクタール、年間のCO2吸収量は700トンを見込む。登録手続きを支援したしずおかフィナンシャルグループ(FG)傘下の静銀経営コンサルティングによると、クレジットの相場は吸収量1トン当たり1万円。購入する企業は自社が排出するCO2を相殺でき、環境負荷の少ない企業イメージの向上や発信につなげる。
 認証登録に必要な費用は約100万円で、同市は最大50%を補助する支援制度を立ち上げた。しずおかFGはクレジット付きの金融商品を企画し、TOKAIグループの東海ガスもCO2排出量が実質ゼロの「カーボンニュートラルガス」を市内の事業者に販売する予定。市の担当者は「官民で地産地消のクレジットを流通させ、さらなる脱炭素のサイクルを生み出していきたい」と語る。
 静岡市では葵区井川の社有林を管理する特種東海製紙子会社の十山が同日、J―クレジット制度の登録を受けた。対象面積は1161ヘクタールで、CO2吸収量は年間1538トン。浜松市の平野興産も認証を受け、同市天竜区や森町の計298ヘクタールでクレジットの創出に乗り出す。静銀経営コンサルティングによると、登録企業や自治体は県内で10社・団体程度。クレジット購入の引き合いもあり、市場の拡大が今後期待される。
 (経済部・金野真仁)
静銀経営コンサルティング 仲介と“卸売”に力 販売先確保で市場活性化  静銀経営コンサルティングは地元の森林などで創出されたJ―クレジットを買い集め、一定規模を企業などに販売するプロバイダー事業の認可申請に向けて準備を進めている。2024年度の事業登録を目指し、売買の仲介支援に加えてクレジットの“卸売”にも力を入れる方針。
 プロバイダー事業は各地のクレジットを購入して在庫保有し、買い手が希望する量を用意して提供する。森林所有者などのクレジット創出者を増やしながら、静岡銀行などしずおかFGの取引先を中心に販売先も確保して市場活性化を図る。地元産クレジットとして付加価値も高め、地産地消を促して本県の森林管理と脱炭素を加速させる。
 森林面積が広い本県はクレジット創出のポテンシャルが高く、県も補助金を設けて制度普及に取り組む。認証取得に必要な樹木の高さなど山林の情報は、県が航空レーザー計測で収集した3次元点群データの活用が可能。測量コストを削減でき、同社の担当者は「参入のハードルが他県よりも低い」と優位性を強調する。

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