氷と雪の世界たんけん 先住民の家どうつくる?【親子の本棚 学校司書 えりすぐり】
寒い朝、水たまりやバケツに氷が張っているとワクワクします。今月のテーマは「氷」。北極圏には、氷と雪でつくった家があるそうです。地球上のさまざまな場所に生まれる氷を研究した中谷宇吉郎の伝記も紹介します。
「『イグルー』をつくる」 木も育たない厳しい自然環境の北極地方では、かつて先住民のイヌイットが氷と雪でできた家「イグルー」で暮らしていました。この本では、今でも猟の時にイグルーをつくるトゥーキルキーさんがつくり方を見せてくれます。
まずは場所を探すところから。いいところを見つけたら、8キロから12キロの雪のブロックを一つ一つノコギリで切りだしていきます。それをドーム型になるよう組み立てます。えんとつや、海の氷をはめこんだ窓をつくり、入り口の前に玄関もつくったら、できあがり。
氷と雪、それから1本のノコギリでできた家での暮らしに想像がふくらみます。
(上竹香織)
「最近、地球が暑くてクマってます。」
アイスクリームの名前にもなっているシロクマは、正しくはホッキョクグマといい、氷で覆[おお]われた北極圏に生息しています。地球温暖化の影響で北極圏の海氷[かいひょう]が減少し、「クマって(こまって)」いるシロクマが、温暖化時代を幸せに生き抜く方法を、「虎の巻」ならぬ「熊の巻」として提案します。ナビゲーターはかわいい子グマです。
一人一人が行動することで、国が動き、世界も大きく変わります。温暖化という共通の問題に立ち向かうことで、国境を越え、種を越え、助け合いつながることができる―。そんな未来を、やさしくユーモアあふれるこの本で、シロクマの親子と一緒に考えてみませんか。
(鈴村路子)
「中谷宇吉郎 雪と氷の探求者」
マイナス30度の中で顕微鏡をのぞき続け世界で初めて雪の結晶を人工的に作り出したのが、この本の主人公・中谷宇吉郎です。
宇吉郎が雪に夢中になったきっかけは、結晶の美しさをじっさいに見たことでした。雪は空でできるミクロの結晶ですが、宇吉郎が研究した氷は、飛行機にくっつく氷、土の中にできる氷、氷河の氷など、地球上のあらゆる場所に生まれる氷が、研究のテーマでした。
雪と氷を知ることは、水・水蒸気・氷と姿を変える「水」のいとなみを知ることです。わたしたちも宇吉郎といっしょに、雪と氷の世界をたんけんしてみましょう。
(梅原智美)
「かき氷 天然氷をつくる」
天然氷とは文字通り、天然水を谷間にある氷池でじっくり時間をかけて凍らせた氷です。その氷は夏まで氷室で保存されます。このような製氷業は全国で数軒となりました。天候に大きく左右され、落ち葉そうじなども毎日欠かせません。
氷は20日くらいかけて厚みを増していきます。雪でだめになってしまった氷は、一度すてて最初からやり直しです。できた氷の切り出し作業もかなりの重労働です。自然の寒さを助けに、ほとんどが人の手間で作られるのです。ゆっくり凍らせることで、水のおいしさが氷に閉じ込められるのだそうです。今年の夏は天然氷のかき氷を味わってみませんか。
(菊地千晶)
取り上げた本
「『イグルー』をつくる」(ウーリ・ステルツァー写真・文、千葉茂樹訳、あすなろ書房、1320円)
「最近、地球が暑くてクマってます。」(水野敬也・長沼直樹著、江守正多監修、文響社、1595円)
「中谷宇吉郎 雪と氷の探求者」(清水洋美著、野見山響子絵、汐文社、1760円)
「かき氷 天然氷をつくる」(細島雅代写真、伊地知英信文、岩崎書店、1760円)
<焼津・藤枝市内の学校司書のグループが担当しました。次回は2月25日です>