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テーマ : 藤枝市

「デビルマン」の妖獣ララ ひたすら前向き ギャグ要員【アニメ脇役列伝 1970年代編⑪】

 「デビルマン」は東映動画(現・東映アニメーション)が漫画家の永井豪にアニメ企画を相談したことから生まれた。永井が生み出したキャラクターや世界観をもとに東映動画はアニメを作り、永井は漫画を連載した。一つのアイデアから生まれた兄弟、それがアニメと漫画の「デビルマン」なのだ。
 歴史的な名作となった漫画と比較して、「子供っぽい」と思われがちなアニメ。だが改めて見直すと、アニメにはアニメならではの魅力がある。特に印象的なのは、第3クールに登場する、欲まみれの人間のダメさをブラックなギャグ交じりで描くいくつかのエピソード。永井の作家性を脚本の辻真先が見事にくんでいることがわかる。そんな第3クールを盛り上げたキャラクターが妖獣[ようじゅう]ララだ。
 ララは敵であるデーモン族の一員だが、裏切ってデビルマンの味方となる存在。ただし彼女は、徹底的に“おバカ”な性格なのだ。さらに能力で美少女に化けているが、くしゃみをするとしわくちゃの素顔に戻ってしまう。要はギャグ要員なのだが、見続けていると彼女が結構、かわいらしく見えてくるのだ。
 それは、彼女のおバカが底抜けだから。例えば第34話「妖獣アルロン 恐怖のマキシ」。強くもないのにデビルマンの代わりに決闘に赴くララ。その時も「アルロンは怒って私を殺すだろうな。そうすりゃ、あたしは楽に死んでさ、バカが治っちゃうもん!」とひたすら前向きなのである。
 この裏表のない姿と周囲からバカにされてもメゲない前向きな姿に、視聴者も「ララだからしょうがないか」とついつい心を許してしまうのだ。だからこそ彼女の退場は悲しくもあった。ララは、アニメ「デビルマン」の魅力を象徴する名脇役なのだ。
 (藤津亮太・アニメ評論家=藤枝市出身)
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 筆者はSBSラジオ「TOROアニメーション総研」(毎週月曜午後7時)出演中。SBS学苑パルシェ校で3月24日に講座「アニメ映画を読む」。テーマは「すずめの戸締まり」。

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