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テーマ : 藤枝市

コーヒー1杯で地域と人つなぐ カフェ×交流会/ラテアートの魅力発信【NEXTラボ】

 家族や友人とのくつろぎの時、あるいは仕事や勉強のお供として、多くの人に親しまれるコーヒー。その魅力や楽しみ方を伝えながら、地域活性化や交流の場づくりに取り組むバリスタたちがいる。コーヒー1杯に込める夢や思いとは。

不登校経験生かし、交流の場つくる(山本紘彰さん) photo01 「コーヒーをきっかけに、人と人をつないでいきたい」と話す山本紘彰さん=静岡市葵区
 「コーヒー1杯で大学並みの学びを提供する場を目指す『cafe(カフェ)ユニ場』です」―。2023年12月、静岡市葵区鷹匠のカフェで開かれた交流会。主催者のバリスタ山本紘彰さん(22)=同市清水区=は、集まった老若男女約20人の前で会の趣旨をこう説明した。参加者は山本さんが入れたドリップコーヒーを片手に、ゲストの話や楽器演奏に耳を傾け、語らいを楽しんだ。
 「コーヒーをきっかけとしたコミュニティーづくりをしたい」と月1回、鷹匠での交流会を始めたのが2年前。さまざまな年代、職業の人が仕事や趣味、生き方について語り、参加者同士も意見交換する。現在は市内の寺や市民活動センターでも不定期に開催する。
  photo01 山本さんが毎月開催する「cafeユニ場」。昨年12月には20人ほどが集まり、交流した=静岡市葵区
 山本さんは不登校だった中学時代、コーヒーを入れることにのめり込み、バリスタを志した。地中海のマルタ島で短期留学中に訪れた、店員や客が日常的に交流するカフェの雰囲気にも憧れた。帰国後は地元の喫茶店に「入り浸って」コーヒーの入れ方を教わり、練習を繰り返した。
 高校に在学中、コーヒースタンドの出張営業を開始。卒業後はホテルや飲食店、個人向けにコーヒーの入れ方をレクチャーし、週1回、間借りする鷹匠のカフェで営業する。コーヒーはグラスに注ぎ、提供するスタイル。「30~40分かけてゆっくりと飲んで、味の変化を楽しんでほしい」と話す。
 バリスタになってから、フリースクールなどで講話をする機会を得るようになった。不登校の子どもたちと接する中で思い立ったのが「cafeユニ場」の活動だった。「自分が不登校だった時、いろんな大人と出会い、道が開けた。日常の中にこそ、生きていく上で重要な学びがある。今度は、自分が子どもたちのためにできることをしたい」。そんな思いで続ける。
 1年前からは「人の紆余曲折を聴く」をテーマに、ゲストと対談する音声番組「Winding Coffee House(ワインディングコーヒーハウス)」も週1回、ネット配信している。「外出が難しくても、新たな価値観に触れられるように」と考えた。今後は今の活動を継続しつつ「若い世代が集い、新たなつながりが生まれる自分の店を持つのが当面の目標」。その先には「子どもの声が反映され、安心して学べる、新しい形の“学校”をつくる」という夢も掲げ、一歩ずつ歩みを進める。

 ラテアートで地域盛り上げる (珈琲王子こと徳永裕人さん)
 エスプレッソの表面に泡立てたミルクで模様や絵を描く「ラテアート」。静岡市清水区の創業75年の自家焙煎コーヒー専門店「トクナガコーヒー」4代目、徳永裕人さん(45)は地域イベントなどで多彩な絵柄のラテアートを披露し、人気を集めている。自らを「珈琲王子」と名乗って活動し、コーヒーを軸に地域の盛り上げを図っている。 photo01 「珈琲王子」として、講座や地域イベントなどでラテアートの魅力を発信する徳永裕人さん(中央)=藤枝市
 幼い頃からコーヒーが身近にあり「いつかは実家を継ぐ」と考えていた徳永さん。大学院時代にレーザー工学を学び、自動車関連企業の研究職を経て2013年に同店に就職した。
 最初に手がけたのは、富士山の溶岩を熱し、そこから放射される遠赤外線でコーヒー豆を焙煎するオリジナル商品。甘く香ばしい風味が特徴で、富士山の世界遺産登録の時期とも重なり、ヒットした。県内の観光施設と組み、コーヒーを使った菓子を土産物として開発するなど、一つずつアイデアを形にしてきた。
 ラテアートを始めたのは7年ほど前。「子どもから大人まで幅広い年代の人たちの心をつかめる」可能性を感じ、技を磨いた。エスプレッソの抽出法やスチームミルクの作り方、カップへの流し込み方などを独自に分析し、レシピを作成する。絵柄のレパートリーは100種を超え、インスタグラムでもファンを喜ばせる。イベントに出店すれば行列ができ、家庭で楽しんでもらえるよう講座も開く。「ラテアートはエンターテインメント。作る過程をいかに簡単に見せるかが難しい」と語る。
 地元から若者が流出していく現状に危機感を持ち、「コーヒー屋にもできることは多くある。時代に合ったやり方で地域の活性化に貢献したい」と意欲を見せる。「アイデアの豊富さと探究心の強さ」に自信を見せる珈琲王子。出会った人たちを笑顔にする、新たな戦略を練っている。

 ■ ラテアートを作ってみよう! ■
 ラテアートは、コーヒーの抽出器具「フレンチプレス」を使ってミルクを泡立て、家庭でも手軽に挑戦できる。徳永裕人さんに初級編として「クマ」の作り方を教えてもらった。

 ① ミルク(牛乳)180ミリリットルを電子レンジで70度に温める。ミルクをフレンチプレスに移し、つまみを持ち、フィルターを液面近くで10回ほど上下させる。さらにフィルターをミルクの高さの真ん中辺りに下げ、20回ほど上下させて、きめ細かな泡をつくる。ミルクはピッチャーに移す。
  photo01
 ② エスプレッソ(抹茶やココアでも代用可)が入ったコーヒーカップを傾け、ピッチャーを回しながらミルクを流し込む。7割ほど入れたところで一度、手を止めた後、ピッチャーの先を液面に近づけ、「丸」(クマの顔部分)を浮かび上がらせる。
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 ③ ピッチャーから残ったミルクをスプーンですくい、クマの耳などを足す。つまようじなどにエスプレッソをつけて目や鼻を書く。ミルクで文字や模様なども書いて、完成。 photo01

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