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テーマ : 富士市

多様な教育環境 整備加速 選択肢広げて個性尊重【検証 24年度 静岡県予算案㊤】

 JR富士駅近くの住宅地にある適応支援教室「アルファー」。2月上旬、富士市在住の稲村翔太さん(17)は総合の授業に取り組んでいた。仲間と交わす会話に、思わず笑みがこぼれる。アルファーは発達障害などの診断を受けた富士、富士宮市の不登校の小中高生ら約100人を受け入れる民間の教室。稲村さんは小学2年から通っている。

ケーキ作りに取り組む稲村翔太さん(左)。稲垣孝一さん(左から3人目)ら職員が子どもの活動をサポートする=8日、富士市水戸島本町の適応支援教室「アルファー」
ケーキ作りに取り組む稲村翔太さん(左)。稲垣孝一さん(左から3人目)ら職員が子どもの活動をサポートする=8日、富士市水戸島本町の適応支援教室「アルファー」
多様な学びの環境整備関連事業
多様な学びの環境整備関連事業
ケーキ作りに取り組む稲村翔太さん(左)。稲垣孝一さん(左から3人目)ら職員が子どもの活動をサポートする=8日、富士市水戸島本町の適応支援教室「アルファー」
多様な学びの環境整備関連事業

 「クラスに乱暴な子がいて、何かされるんじゃないかと小学校に行くのが怖くなった」。稲村さんは当時をそう振り返る。現在はアルファーが提携する通信制高校の2年生になり、勉強とアルバイトの両立に励む。教室は「接しやすい先生がいて、リラックスできる場所」に変わった。
 不登校の子どもは全国的に増え、静岡県内でも年々増加している。県教委義務教育課によると、県内公立校の2022年度の不登校は、小中学生9447人。16年度と比べて2倍以上に増え、過去最多を更新し続けている。
 県教委は24年度、フリースクールの支援制度の創設に踏み切る。3千万円の予算を確保し、1団体につき100万円を上限に運営費の2分の1を補助する。昨年9月、県内24のフリースクールや市町教委、地域の教育支援センターの関係者が集う会合を初めて開いた。多様な学びの場と居場所の拡充には、学校とフリースクールが連携を深める必要がある。初会合では、利用者数の見込みがたちにくいフリースクールの性質から、経営の不安定さを課題に挙げる意見があった。
 アルファーを運営する一般社団法人サン・ビレッジは、4月に新たにフリースクールを開設する予定だ。統括を務める稲垣孝一さん(26)は「開設に向けた準備や経営基盤がないと運営は厳しい」と業界の実情を吐露し、県教委の支援に関心を寄せる。
 県教委はこのほか不登校への対応として、インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用した「バーチャルスクール」も計画し、予算2千万円を充てた。
 県教委は近年、多様な教育の機会を選択できる環境整備を加速させている。昨年4月に県内唯一の夜間中学、県立ふじのくに中(磐田、三島市)を開校した。不登校で形式的に中学を卒業した人や、母国で義務教育を修了せず来日した外国人たちが通う。
 今年4月には島田市に単位制定時制の県立ふじのくに国際高が開校する。生徒本人が時間割を組み、学外の活動との両立を推奨する。海外の大学も受験しやすくなるよう、国際的教育プログラム「国際バカロレア」の認定も目指す。
 県教委の塩崎克幸教育監(64)は、人格を形成したり社会ルールを学んだりする上で学校は重要な役割を果たすとしつつ、「今では個性に応じた学びの選択肢が広がっている。どこで学んだとしても、最終的には社会的自立につなげる視点が重要」と指摘した。
 (政治部・大沼雄大)         
     ◇
 静岡県が編成した24年度当初予算案は、持続可能で安心して暮らせる社会を目指す。多様な教育、能登半島地震を踏まえた防災対策、茶業振興に焦点を当て、県の対応と課題を検証する。

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