色あせぬ輝き ビンテージの魅力【しずおかアウトドアファン】
所有者が長年大切に使い続けたアウトドア用品には、新品にはない味わいがある。県内でビンテージのキャンプギアや衣料品を扱う店舗を訪ね、色あせない輝きと魅力について聞いた。(生活報道部・草茅出)
フリマ通じ所有者が交流
思い出の詰まったアウトドア用品を長く使い続けられるよう、所有者同士やメーカー、店舗などをつなぐ試みも。3月31日に浜松市中央区の渚園で開かれたイベント「Re[リ]‥Pair[ペア]」では、キャンプ道具やウエアなどを扱うフリーマーケットや出張修理など多彩な催しが人気を呼んだ。
フリーマーケットは、出展者と来場者の対話を促そうと値段の掲示は禁止。交換や販売を開始する前に2時間、品物を吟味する時間を設けた。愛知県豊川市から訪れた小柳幸次さん(57)は「品物がたくさんあって見て回るのが楽しい」と話した。刃物研ぎやアウトドアブランド「パタゴニア」によるウエットスーツの出張修理のコーナーもにぎわった。
コロナ禍のアウトドアブームでキャンプなどの愛好者が増えた半面、野外での道具の使い捨てなどモラルが課題となっている。実行委メンバーでNPO法人DIGtag(湖西市)代表理事の佐々木善之さん(44)は「ギアやアイテム、ウエアを大事にする価値観を育てていきたい」と話している。
高品質、修理で長持ち
U’s Lantern(富士市)
店舗の扉を開けると、壁一面にずらりと並んだランタンに圧倒される。富士市柚木の「U’s[ユーズ] Lantern[ランタン]」は、主に1980年代以前に製造されたオイルランタンの販売や修理を専門に手がける。店内には100年ほど前の製品もある。
店主の村松一真さん(36)は15歳ごろ、自宅にあったランタンを直したのをきっかけに独学で修理の技術を習得した。「例えば、(米国のブランド)コールマンのランタンは、30年代には仕組みが完成している。古い製品は現代より高品質の部品を使っている場合も多く、しっかり直せば不具合が出ることはない」と指摘する。近年は若い世代にも質の良い製品を長く使う意識が浸透し、注文や修理依頼が増えているという。
現代にないデザイン
PAJAMA MOON(藤枝市)
ビンテージギアは、時代や国によって異なるキャンプ文化を映す鏡にもなる。藤枝市下之郷の「PAJAMA[パジャマ] MOON[ムーン]」が扱うのは、1980年代にフランスのブランドが手がけたテントが中心。同国のテントは休暇中の長期滞在を想定したロッジ型の広い室内空間を持ち、外が見える大きい窓や頑丈な骨組みが特徴になっている。
「80年代のテントは、花柄をあしらうなどデザインも個性的。自分らしい1点物を求める中高年やファミリー層に人気がある」と、同店を運営するアクアトレーディングスの佐藤幸二郎さん(45)。この年代のテントは海外でも人気が高く、流通量が減っているため、同社では当時のデザインを取り入れた自社企画のテントなども販売している。
気に入った物を長く
LODGE(静岡市)
静岡市葵区の中心市街地。常磐公園近くにある「LODGE[ロッジ]」は、山小屋のような落ち着いた空間に築地翔吾さん(34)が米国で買い付けたアウトドアの古着や登山用品が所狭しと並ぶ。自身は1990年代のデザインに引かれるという築地さんは「米国では70年代にバックパッキング文化が広まった。90年代はそれらの思想が深まった時期で、色の合わせ方やギアの形に今では見られない独創的なアイデアが詰まっている」と語る。
衣類は経年劣化で廃棄されていく物も多いので、買い付けの旅は一期一会の楽しさがあるという。「毎年のように買い替えるのではなく、気に入った物を長く使ってほしい。よい品物を伝える店になりたい」