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テーマ : 富士市

大自在(2月12日)圧巻の主人公

 雲をつくような巨人ダイダラボッチの昔話は、大男の名が替わるなどするが各地にある。近江[おうみ]の国を掘った跡が琵琶湖になり、その土を捨てた所に富士山ができ、途中転んで手をついた跡が浜名湖になったと聞き覚えている。
 日本一高い富士山と日本最大の琵琶湖は、筆者の頭の中でつながっている。その糸が少し太くなった感じだ。話題の青春小説「成瀬は天下を取りにいく」、続編「成瀬は信じた道をいく」の舞台は琵琶湖畔の滋賀県大津市の膳所[ぜぜ]駅周辺。作者の宮島未奈さんは富士市出身で大津市在住。
 「天下を」は昨年の静岡書店大賞など10冠。2作品は成瀬あかりの中学2年から京大1回生が描かれる。「かつてなく最高」「唯一無二」の主人公という広告は誇張ではない。
 「天下を」は、そのうち読めればと思って図書館で予約、順番が回ってきた。テスト前になると部屋の掃除をしたくなるのは、自分に言い訳をつくろうとする「セルフ・ハンディキャッピング」。デジタルの休刊日コラム「D自在」の作業をしていた筆者もその心理だったろう。開くと読みやすく、すぐに読み終えた。
 1月刊行の「信じた道を」は図書館の順番を待てなかった。小学生に向かって「いかにもわたしが成瀬あかりだ」、多才ぶりから将来何になるのか聞かれ「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」。慣れると、その口調も愉快。 
 変わり者だが嫌われない。出すぎたくいは打たれない。本人には至って普通の言動が関わる人々や読者には圧巻の、大スケールの主人公だ。

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