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テーマ : 富士市

【第4章】半割れ発生(後編)② 遠州灘でM8.5 裏山崩れる 「助ける」がれきと格闘【東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える/いのち守る 防災しずおか】

 四国沖でマグニチュード(M)8.0の大地震が起き、気象庁が後発地震への警戒を呼びかける南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)を発表してから約1年半が経過した。津波浸水想定区域に住む要配慮者らに事前避難が呼びかけられた「地震発生から1週間」はとうに過ぎ、市民が自宅での通常生活に戻った中、「その日」は突然訪れた。「助ける」がれきと格闘

 生きた心地がしない時間が数分間続いた。今まで経験したことのない猛烈な揺れ。自宅で就寝中だった東海駿河さん(73)は立ち上がれず、妻の伊豆美さん(68)の身を守るため布団をかぶせて揺れが収まるまで耐えた。空から何かが落下したような「ドシーン」という衝撃音が響き、2人の体が床から跳ね上がった。地震発生後の主な動き(架空のシナリオ)
 やっと揺れが鎮まり、2人は「助かった」と顔を見合わせた。別室にいた長女で小学校教諭の富士子さん(35)も無事だった。築50年以上の自宅は耐震補強してあり、寝室にたんすや本棚を置かないようにしていたことなども功を奏した。
 近隣のあちこちからサイレンや警報音が鳴り響く。「かなりの大地震だったはずだ」と駿河さん。停電で照明もテレビもつかない。長男の会社員遠州さん(38)に安否確認しようとしたが、スマートフォンは電話もインターネットもつながらない。駿河さんは非常用持ち出し袋に入れていた小型ラジオの電源を入れた。
 <震源は遠州灘、地震規模はM8・5。静岡県、愛知県で最大震度7が観測されています><太平洋沿岸に大津波警報、津波警報が発表されました。遠州灘沿岸の予想津波高は10~15メートル。既に第1波は到達している可能性があります>
 「四国沖の『半割れ』に続き、やはり割れ残っていた東側の震源域でも地震が起きてしまったか…」。駿河さんは目の前が真っ暗になる思いがした。1年半前の夏、四国沖でM8・0の地震が発生。有識者は南海トラフ地震想定震源域の西半分だけ活動する「半割れケース」と判定し、国民に割れ残った東半分での後発地震発生に警戒を促してきた。だが、この1年近くは地震活動も静穏となり、危機は遠のいたような雰囲気が社会に漂っていた。
 自主防災会会長を務める駿河さんは、地元の小学校への避難所開設や地域の被災状況確認のため、すぐに参集しなくてはいけなかった。その前に自宅の被災状況だけ確かめようと外に出て驚いた。自宅裏の急斜面が崩れ、土砂がコンクリート防護壁やフェンスを突き破り、母屋の間際まで押し寄せていた。余震や雨でさらに崩れそうに見える。
 「1階にいるのは危険だ。かあさんと富士子はなるべく2階にいてくれ。富士子、かあさんを頼んだぞ」。そう告げて駿河さんはミニバイクで家を後にした。
 駿河さんが自治会館に向かう途中、道路は波打って段差が生じ、液状化でマンホールが路面から突き出ていた。「これじゃ消防車や救急車が通れないじゃないか」。さらに進むと、1階が押しつぶされる形で倒壊した住宅が見えた。「今、助けますから!」。下敷きになった住民を救出しようと、駿河さんの知人で大学教員の岩井山仁さん(70)ががれきを持ち上げようとしていた。駿河さんもミニバイクを止めて加勢した。

Q&A 災害時のスマホ利用
 Q 災害時はスマートフォンが使えなくなるのか。
 A 電話やメール、インターネットのいずれも、携帯電話の基地局が地震や津波で被災したり、回線にアクセスが集中したりすると、通信ができなくなる場合がある。そのほか、スマホ自体のバッテリー切れや災害による破損・紛失で使えなくなる恐れもある。
 Q 対処法は。
 A 災害時は音声通話よりネットの方がつながりやすい。駅やコンビニなどのフリーWi-Fi(無線LAN)で接続を試すのも手だ。安否確認はSNSのほか「LINE安否確認」、ネット上の災害用伝言板「web171」なども有効。スマホのバッテリー切れや、アクセス集中による通信規制などの時は公衆電話も活用するといい。平時から大事な連絡先の電話番号を書いて財布などに入れておいたり、小銭や現金を持っておいたりすると、外出先での災害時にも役立つ。
 Q ほかに留意すべき点は。
 A 停電が長期化すると充電も難しくなる。モバイルバッテリーの活用や、スマホの省電力設定を利用してバッテリー消耗を抑えることなども大切になる。

 ◇この物語は南海トラフ地震の幅広い発生パターンの一例を描いた架空のシナリオです。実際には全く異なる発生状況もあり得ます。
 ◇「東海さん一家の防災日記」の感想や、地域防災への意見などを募集します。お住まいの市町名、氏名またはペンネーム、年齢、連絡先を明記し、〒422―8670  (住所不要) 静岡新聞社編集局「東海さん一家の防災日記」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください。

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