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テーマ : 富士市

郷土研究、静岡県内高校生が活躍 社会科系部活減少傾向の中 

 郷土研究部や史学部といった高校の社会科系部活が全国的に減少する中、8月の「全国高校社会科学・郷土研究発表大会」で浜名高(浜松市浜北区)の史学部が最高賞を受賞するなど県内の生徒が奮闘している。研究テーマに対しフィールドワークを重ねる作業は、高校で必修科目となった「探究」の目的にも合致するとして、関係者は魅力や実績を再認識してもらおうとPRに力を入れている。

地域住民に聞き取りをする浜名高史学部の生徒ら=2022年8月、磐田市(同校提供)
地域住民に聞き取りをする浜名高史学部の生徒ら=2022年8月、磐田市(同校提供)
貴田潔准教授
貴田潔准教授
地域住民に聞き取りをする浜名高史学部の生徒ら=2022年8月、磐田市(同校提供)
貴田潔准教授

 都道府県の高校文化連盟(高文連)に郷土研究などに関連する事務局があるのは静岡を含む10道県のみで、全国高文連には郷土芸能や日本音楽といった専門部はあるものの郷土研究に関する組織はない。文化部のインターハイと呼ばれる「全国高校総合文化祭」でも発表の機会はなく、毎年8県ほどが参加して全国大会を開いている。県内では約20年前から顧問の引退や部活動の再編により減少し、この5年ほどは県高文連郷土研究専門部の加盟校は11~14校。情報メディアや演劇などの活動の一端になっていることもあり、同専門部の桜井祥行会長(富士市立高校長)は「多くの学校でかろうじて存続している状態」と実情を明かす。
 浜名高史学部も、顧問の井口裕紀教諭が赴任した7年前には大会に出場していない状態だったという。「活動しなくなれば、たちまち部活動の統廃合の対象になる」と、井口教諭は同部OBの研究をたどることから指導。徐々にフィールドワークを増やし、生徒の関心を広げるようにした。
 最優秀賞に輝いた磐田市草崎地区に残る「乾張り屋敷」の構造に関する研究は、地域の歴史講演会への参加がきっかけ。天竜川下流域である土地柄を踏まえ災害対策の観点から屋敷の構造を考察した。研究に携わった飯田衣菜さん(2年)は「地域の人に話を聞くたびに視野が広がる実感があった」と振り返る。
 研究結果をまとめるだけでなく、大会に向けて繰り返し発表の練習をしたという。馬渕太一さん(同)は「原稿を暗記することはもちろん、スライドを棒で指しながら分かりやすく伝えるよう心がけた。表情も重要だと気づいた」。校内で研究成果を紹介したり、校外活動の楽しさをPRしたりして部員は20人を超えた。昨年末から活動日数も増やしている。
 前任地の韮山高で普通科に文系探究コースを開設した桜井会長は「歴史の中に地域を再生するヒントがある場合がある。住んでいる地域のことを考え、地元愛を深めることはまさに探究の目指すところ」と強調。「知的好奇心を存分に発揮できる活動であることを知ってほしい」と話した。

 「現場に赴きまとめる」 広い分野で役立つ力 静岡大人文社会科学部 貴田潔准教授
 郷土研究部や史学部など社会科系部活の魅力や今後の在り方とは。8月に静岡市内で行われた「全国高校社会科学・郷土研究発表大会」で審査員を務めた静岡大人文社会科学部の貴田潔准教授は「現場で見聞きした事柄を論理的に文章に表す力はどんな分野でも役立つ」と語る。
 全国大会は8県15校が出場した。「少し前までは歴史を深掘りすることに集中している印象もあったが、地域おこしや防災と絡めて現代に生かした研究をしていた」と各校の発表を振り返る。「リベラルアーツ」や「地域研究」などの名前で活動する学校もあり「『探究』を意識し、幅を広げていることが分かった」と話す。
 今後注目すべきテーマとして「地方の、特に山間地で暮らす人たちの生活を記録することは後世に大きな意味を持つ」と指摘。大学で指導する立場としては「高校である程度指導を受けながら習得したことを基に、大学では自ら深められるかが重要。フィールドワークなどを通して、好奇心の赴くままに新しい環境に飛び込んでいく力を養ってほしい」と呼びかけた。

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