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テーマ : 富士市

富士市南松野 優美な“貴婦人” 「火の見櫓」編①【アートのほそ道】

 ヤマモミジやケヤキ、イチョウが整然と植わった庭園に据えられた、真っ白な火の見櫓[やぐら]。高さ19メートルは県内最大級だが、周囲を圧する気配はない。背筋を伸ばした貴婦人のようなすっきりしたいでたちと、“足元”のなだらかなカーブは、優美さに満ちている。八角形の屋根は少し外側に膨らんでいて、鉄製とは思えない柔らかな雰囲気を醸し出す。

富士山を望む傾斜地の庭園に移された火の見櫓=富士市南松野
富士山を望む傾斜地の庭園に移された火の見櫓=富士市南松野

 富士市南松野のカフェ「無上帑[むじょうど]」の敷地内に立つ火の見櫓は、2005年に地元の市民グループ「櫓[やぐら]an[あん]」(久保田常右代表)が旧富士川町の国道1号沿いから移設した。06年には、国の登録有形文化財に認定された。
 1951年、旧富士川町消防団第2分団のために、ドイツ人設計士がデザインし、完成させた。円形、四角形の踊り場をバランス良く配した姿には「東海一美しい」との声があったという。99年、地震対策を理由に撤去が決まったが、近隣に資材置き場を持っていた久保田代表(46)の父、隆義さん(75)が引き取った。6年後の現在地への移設は、新しい文化の拠点づくりを狙ったものだった。
 久保田代表は、富士山と火の見櫓が調和した美しい景観を生かし、さまざまなイベントを展開する。近年は結婚披露宴も実施した。「自然と人間が共存する場所の象徴として、役割を果たしている」と話した。
 (教育文化部・橋爪充)  江戸時代に生まれ、明治から昭和にかけて国内各地に広がった火の見櫓。高所から火事を見つけ、周辺住民に半鐘で知らせる。2000年代初頭の「火の見櫓からまちづくりを考える会」調査によると、県内には約千基が確認されている。各地の特徴的な火の見櫓を訪ねる。

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