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テーマ : 富士市

富士・後藤さん 療養先の蒲原総合病院で絵画展 病室で創作 院内に彩り

 入院とともに一度は手放した画用紙に再び手を伸ばした。富士市の共立蒲原総合病院で2年余り療養を続ける後藤一成さん(67)=同市=だ。食事と着替えの時以外はずっと画用紙と向き合うほどに没頭し、昨年10月から病室で描きためた作品は60点を数える。体を起こすことすら一苦労な状態の後藤さんだが「描いている時が楽しくてたまらない」と目を輝かせる。12月末から院内で2度目となる個展を始めた。

病室で絵を描く後藤一成さん(右)=23日、富士市の共立蒲原総合病院
病室で絵を描く後藤一成さん(右)=23日、富士市の共立蒲原総合病院

 美大出身の後藤さんは塾講師を定年退職するまでの約40年間、絵を描くことから遠ざかっていた。障害者福祉施設で自閉症の子どもたちに絵を教える機会を得たことから、アクリル画の制作を始めた。しかし、体調を崩して2021年9月に入院すると同時に再び筆を置いた。
 全身に痛みがあって病室を出られず思うように気分転換ができない中、同院の緩和ケアスタッフとの雑談から、入院前に手がけた作品を展示してみることになった。初の院内個展に絵を見た患者らから「他の絵も見たい」などと応援の声が寄せられ、入院生活の心の支えが生まれた。
 徐々に痛みが和らぎ、スタッフから他の患者向けに塗り絵の手本を作ってほしいと頼まれてから、後藤さんは色鉛筆画に取り組み始めた。松永光代看護部長は「日に日に表情が明るく言動も前向きになっている」と、後藤さんの変化を受け止める。
 開催中の個展は外来患者らも行き来する1階採血室前で、テーマごとに5点ずつ毎月入れ替え、1年間ほど開く予定。第1弾として青龍など四神と麒麟(きりん)を展示していて、迫力ある描写に立ち止まって見入る人もいる。鑑賞者からの励ましの声が、後藤さんの原動力になっている。
 1日で完成させる日もあり、約3年で15枚だった入院前よりも制作スピードは上がった。「明日は何を描こうかと考えながら眠るから、起きたらすぐに手が色鉛筆に伸びちゃうよ」と後藤さんは笑う。無機質な病室から色彩豊かな作品が次々に生み出されている。
 (富士宮支局・国本啓志郎)

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