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テーマ : 牧之原市

大自在(9月2日)河本千奈ちゃん

 夏休みが明け、登校する子どもたちの姿に日常が戻ったと感じさせられる。子どもたちの表情はさまざまだが、どの子の保護者も元気に通ってほしいと願っているに違いない。
 そんな当たり前の日常を取り戻せない保護者がいる。昨年9月5日、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、河本千奈ちゃん=当時(3)=が送迎バスに置き去りにされて死亡した。事件から1年がたつのを前に父親が報道陣の取材に応えた。
 千奈ちゃんは「今でも家族の主役」だという言葉に胸が締め付けられる。癒えない悲しみと園の運営法人に対する憤り。心中は察するに余りある。本紙報道などを通じ、事件の経緯や運営法人の問題点についてさまざまな情報に接してはきたが、行き着くのはいつも「なぜ防げなかったのか」の思いだ。
 一方で気象庁が「異常な猛暑」と断じた今夏も、北九州市の商業施設駐車場で0歳の男児が車内に置き去りにされて死亡した。両親は「相手が連れて降りたと思っていた」という。保護責任者遺棄致死容疑も視野に警察の捜査が進む。
 日常に潜む不注意や怠慢が原因だったとしても、高温の車内で子どもの命が奪われるという結果はあまりに重大だ。毎夏のように繰り返される悲劇を何とかして防がなければならない。
 1990年のきょう9月2日に発効した子どもの権利条約は児童の権利を明記し、締約国は「児童の最善の利益」のために行動しなければならないと定めている。最も基本的な「生きる権利」さえ守られない現実を、社会全体で受け止める必要がある。

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